盲探し

なんんだいって、夜に成っていた。寒空に風が吹き抜ける。酒場から人が出てきた。清々しげだ。入る。

「いらっしゃいませ……あぁ、あなたでしたか。」

店主は、またも暖かく出迎えてくれた。そうだ、帰りに呑んで行こうと思ったんだった。

「何か、呑んで行きます。」

席に着きながら言う。店主は微笑んで、

「カクテル、ウイスキー、焼酎もありますよ。」

「あ、お酒は……」

実は俺は酒が呑めない。呑んでいると晴人が嫌がるからだが。そうだ、晴人。

「コーヒーがございますよ。」

「じゃあ其れを下さい。えっとあの、預かって下さった犬なのですが……」

「それなら、向こうの部屋で寝ていますよ。」

店主が手の先を向けた所には、暗い部屋があった。目を凝らすと、木箱が沢山たくさんと、晴人が居た。茶葉の保存庫だろう。

有難ありがと御座ございました。何とお礼を言えば善いか……」

「それなら、コーヒーの味を褒めてくださいよ。」

軽い冗談ユーモアを挟んで答えられる。常連に成ろう、と思った。



「おい、晴人!」

「ワン!ワンワーン!」

美味おいしい珈琲コーヒーを呑み終え、満足した。頭を下げて店を出る。其れにしても、彼処あそこは儲かっているのだろうか。2回とも客が居なかった。晴人を迎えに行って呑んでいる時、途中で誰か入って来た程度だ。通おう。あれは善い店だ。


そんな事を考えていると、電話が掛かって来た。那須だ。確か、看護師。

「イルカさんが居なくなったんです!!」

誰だ、海豚イルカって。そうだ、あの殺し屋……いや、だ被害者か。かく、奴だ。

脱走?怪しまれるのに?いずれ判ると踏んだのか?人殺しの考え方は読めない。


彼奴あいつの匂い、判るか?」

晴人が首を横に振る。そうか。病院には連れて行っていないんだった。抑々そもそも彼奴あいつが誰か判らないのだ。

「そうだな。血の臭いがする、サングラスの男を探してくれ。判ったか?」

首を縦に振るのを見て、歩き出す。晴人、言葉分かってるよな、と思いながら。

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