輪禍

車を停める音。

ドアを開けた音。

犬の鳴き声。俺の相棒、晴人はれひとだ。


晴人は、7歳の警察犬ラブラドール・レトリーバーだ。人間の年齢に直すと、約44歳。俺より年上じゃないか。


「晴人、此方こっちだ。」

頭が良く、運動も出来て聞き分けのい晴人は、何時いつも俺と仕事することに成っていた。

人とは敬語ではなす俺だが、此奴こいつとだけは腹を割って咄せる。


「大丈夫か。一寸ちょっとの辛抱だからな。」

晴人が少々苦しそうだったので声をかけた。交通事故の現場は、犬には臭いが強すぎる。

「10時頃、事故があったんだ。怪我人も可成かなりいるみたいだから、原因を究明する。手を貸してくれ。」

犬に言葉が判るのかは知らないが、一応説明をする。晴人は理解しているのか訓練の結果なのか、首を上下に動かす。

し、有難ありがとう。何時いつも本当に感謝する。」


警視庁 刑事部 鑑識課 警察犬係、栗竹 誠。れが俺だ。ただ、警察犬の扱いが上手いので此処ここに配属されただけで、仕事は捜査一課のようなものだ。トレンチコートを着て、刑事の様に捜査している。


俺は所謂いわゆる、殺し屋組織(世間ではような人物が実在しているとは認知されていない)を捜査している。今日は捜査一課の連中が、1人見つけた、車に乗った、俺達も追いかけると騒ぐから、多少期待もしていたのに、これだ。事故りやがった。


暴走輸送車トラックとの正面衝突。歴史上でもうない激しさで事故は起きた。

そして奴は……何と、息をしていたらしい。物証が取れていないので、殺し屋かもしれないと言えど、事故に巻き込まれた一般人。助けない訳にはいかない。

ただ、写真を見たが、く即死じゃなかったなという大怪我。満身創痍。の道助からないだろう。

輸送車トラックの運転手は見つかっていないという。消えた運転手。巻き込まれた殺し屋。何か在るぞ、の事故。何かが。


ワン!ワン!!

晴人が呼んでいる。何か見つけたのだろうか。

アンパンだ。別称シンナー、スピード、白い粉。

成程なるほど。殺し屋が運び屋をらされた所で、ってとこか。実に不運だな。

有難ありがとな。もう一寸ちょっと探しておいてくれ。」

晴人は、キャンキャンと嬉しそうに走っていった。無邪気むじゃきな奴だ。

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