Hey Bartender By. Floyd Dixon

木漏れ日。鳥のさえずり。木のざわめき。暖かな風。今日も平和です。

犬の鳴き声がしなければ、の話ですが。




ショーツクルの匂いに寄って来る犬を追い払うことから、私の仕事は始まります。

カラヤーノで栽培されるショーツクルは、独特な香ばしい匂いがあります。犬は人の千万倍、億万倍の単位で嗅覚が鋭いので、それが麻薬的な作用を持って、集まってくるのです。


ショーツクルは保存が難しく、夜中は通気性の高い外に出して置かなければならないのですが、犬に荒らされても困ります。柵を儲けることでこの問題は解決しましたが、柵の周りに集まる犬はどうしようもありません。


「ちょっと、失礼します、よっと。」

賢いもので、声をかけながら通ると少し道を開けてくれます。そのような気がするだけなのかもしれませんけど。


なんとかショーツクルを回収すると、仕込みの作業に入ります。店内の掃除をし、ボトルを磨き、氷を運び、果物を出し…… とにかく沢山の準備をしてようやく、ドアのプレートをopenに裏返します。

営業時間は昼12時から夜10時。それだけやっても、お客さんは2人3人居ればいい方。まぁ、老後の楽しみみたいなものですから良いんですけれども。



ゆったりとしたテンポで流れるジャズの中で、微かに感じるお酒の匂い。この空間を独占しているとは、私はなんて幸せ者なのでしょうか。


のんびりと昔を思い出していました。

時間に縛られた生活。上司に従う日々。

なぜあんな仕事に就いたのだろうと思い、苦笑しました。

確かに、楽しいこともありました。やりがいを感じることも多かったですし、毎日に変化がありました。でも、やはり平穏が一番。そんな私には、バーテンダーはまさに天職でした。

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