違和感の判明

服屋に入る。店内はショッピングモールの服屋のような雰囲気だ。どこか懐かしく感じる。

しかし、先ほどから感じている違和感。これを解決しないとどうやら楽しめそうにない。そう思いながら俺は店の奥へと進んでいった。


「蒼河さん。これ可愛くないですか~?」

「お...おう。そうだな」


不意に聞かれて、テキトーに返事をする。しまった、と思ったときは既に遅し、少し機嫌を悪くしてルーナは試着室に行ってしまった。

誰もいなくなった女性服売り場で茫然と立ち尽くす。


「はぁ...この違和感をどうにかしないと楽しむものも楽しめないんだよなぁ...」


ポツリとため息交じりの声が漏れた。先ほどから段々と違和感が強くなっていってる気がする。そんな状態に焦燥感をいだきつつも試着室の近くの椅子に座った。

しばらくして、シャアッと試着室のカーテンが開かれる。その音に驚きながら試着室のほうを覗いた。すると、顔を赤くしたルーナがこちらを上目遣いで見つめてきた。


「蒼河さ...ん...どうですか...ね...」

「なっ―」


思わず絶句する俺。その理由はルーナが着ていたのが...露出度の高い踊り子が着る様な服。だったからだ。

しかし「元の服に着替えろ!」と言う前に先ほどから感じていた違和感が今までにないくらい高まった。


「―どこだっ!?」


思わず叫び、周りを見渡す。


俺が座っていた席。違和感はない。


ルーナがいた試着室。違和感はない。


会計カウンター。違和感はない。


無我夢中で俺は目を凝らす。そのとき、俺は一定の場所から目を離せなくなった。

その場所は、俺の斜め上。ルーナと俺の丁度中間地点の斜め上だ。


「そこかっ!」


とっさにジャンプし、違和感の場所を鷲掴みにする。普通なら空気を掴み、そのまま転倒するのだろうが、今は違った。

俺は透明な【何か】を掴み、そのまま空中に浮いていたのだ。


『そんな...!』


掴んだとたん。聞き覚えのあるロリボイスが頭に響いた。そう。俺をこの世界に送った張本人。幼女な神様だ。

ひとまず俺はその【何か】を空中から降ろし、頭の中で幼女な神様に声を届かせる。


「(どういう意味だ?これは何かの魔法だろ?)」

『う...』


言いずらそうに言葉を詰まらせる幼女な神様。このまま言い逃れるのだけは断じて許すわけにはいかない。

俺は少し考えると、再び頭の中で念じた。


「(もしも、言わないならこの魔法は誰が使用したのか皆に言うぞ)」

『...ふぇ?』

「(だから、お前の存在を明かすぞってことだ)」

『...』


数秒間の沈黙。ダメか...と半分諦めていると、脳内に直接大音量が流れてきた。


『ちょちょちょちょちょちょ!言うから言うから!それだけはやめて!ねぇ!ねぇ!』

「(分かった。分かった。わかったからやめてくれ!)」


そう思念を飛ばしひとまず落ち着かせる。さぁ。尋問を始めようとするところでルーナが訝し気にこちらを見つめていることに気づいた。


「(...聞きたいことは山ほどあるけど、ひとまずこの買い物の後に聞く。ちゃんと反応しないとばらすからな)」

『う...うん。わかった。また後でね』


そう言ってロリボイスが切れる。先ほどから強く感じていた違和感も同時に消えたようだ。やはり、幼女な神様のせいだろう。後で聞くしかないな。

そう決断したところで、俺は意識を切り替えた。


「ごめんな。買い物の続きを...っと...そ...その前に...服...着替えような?」

「え...?―っ!」


ピシャッと試着室のカーテンが閉められる。やはり、恥ずかしかったのだろう。俺がそっけない態度を取るから楽しませようとああいうことを...そう思うと少しだけ申し訳ない気持ちになる。が、俺はその思念を振り払って楽しむことだけを考えた。

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幼女な神様に特殊能力を貰ったら予想以上にチートだった件について さざなみ @bazirusousu

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