ドキドキの魔法体験
「―んっ...」
目覚め始めた感覚の中、生暖かい吐息と妙に色っぽい声が顔に掛かる。私服のまま寝てしまったせいか全身がいまだに怠い。しかし、自分の身に何が起こってるのかを知るべく重たい瞼を開いた。
「あ...起きましたね。蒼河さん」
そう。ルーナが馬乗りの態勢で、俺に跨っていたのだ。
「な―ルーナ!?どうして俺の部屋に...というか何やってんだよ!」
驚き、跳ねのけようと力を加えるが、見えない糸のようなものでガッチリと固定されて動けない。おそらくこれが【魔法】という物だろう。
人知を超えた力のようなものを体で体験し、今の状況と混じり合い更なる緊張感を生む。
そんなふうにガチガチになっている俺をよそに、ルーナが口を開いた。
「...まだ、蒼河に助けてもらったお礼が出来てないので...それどころかお金まで頂いて...私が出来るお礼など...これくらいしか...」
そう言って白いワンピースのボタンを外し始める。そんな姿を見て緊張感よりも焦りが強くなってくる。
このままだと本当に危ない。そう思いとっさに空気から強い風を生み出す。これなら殺傷能力もないはずだ。
その予想通り、ルーナは俺の体から吹っ飛び床にしりもちをついた。いつの間にか俺を固定していたものは無くなっている。
俺は吹っ飛んだルーナのところまで歩いて、手を差し出し、言葉を発した。
「お礼はこの街のことを教えてくれてるだけで十分だぞ。」
「あぅ...そうですか...」
ルーナは自分がやったことの重大さに気づいたのか赤面している。まぁ..あんなことしたんだもんな。当たり前か。
しかし、ずっとこのままだと少し気まずい...もう少し教えてもらいたいしなぁ...何とかしてルーナを元通りにしなければ。
「う~ん...このことは忘れておくから。そんな気にしなくていいぞ?」
「う...わ...分かりました...」
未だに納得のいかないような顔だったが、さっきよりはマシだ。そのことに内心少しホッとしながら時計を見る。七時八分。そろそろ夕食の時間のはずだ。カウンターのところで見た食堂の営業時間にも七時からになっていたから間違いない。
「そろそろ夕食だろ?食堂行こうか」
「は...はい!」
未だにある気まずさを紛らわすため、俺たちは速足で食堂に向かった。
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