/12
コンコンコン、窓をノックする音で目がさめる。こんな朝から誰だろう、といってもこんな事するのは秦をおいて他にいないのだが。
「って、え?」
起き上がると、私は
いつもの部屋、いつもの風景。
昨日が最後の1日だったはずなのに……私は確かに此処にいる。驚きを隠せない。
自分は生きている? と確認する様に手を見つめ握りしめた。
頬もつねった。
痛い。夢ではない。現実。
そして窓の外には、もう見る事も会う事もふれる事も話す事もできないと思っていた秦の姿がそこにはあった。窓を開けて、と言わんばかりのノックで思わず苦笑する。その期待に応え窓を開ける。
「真白、外みろよ。綺麗な虹だ」
空一面には、私の見慣れた綺麗で今までに見た事もないくらいの大きな虹があった。この虹が契約の虹なのか、自然現象の虹なのかはわからない。けれど、とても特別な何かに思えた。
数日後、私たちはいつもの様に登校する。
朝から一緒に。
笑いながら。
幸せそうに。
恵梨香には「この数日で何があったの?」と言われるくらい仲がいい。それもそうだろう。私はカミサマと契約したはずなのに、なぜか此処にいる。何が起こったのかはわからない。だから毎日を惜しむように過ごしている。これはきっとカミサマからのプレゼントだろう。そう思っている。
そして、私と秦には二人だけの秘密ができた。決してHな部類ではない。
最後の1日以降、秦にも虹が見えるようになったのだ。あの日見た虹はまだ消えていない。朝も昼も夜も、私たちを見守るように、ずっと空にある。
お天道様と一緒に、お月様と一緒に。私と秦の様に、隣にいる。
そして、枯れ果てた草花も長い休眠を終えみるみる内に元気を取り戻している。みんな生きている。その謎の現象に、ニュースでも取り上げられていた。
この町では不思議な事が度々が起こる。
急に元気になった草花。
生きている私。
そして、私と秦しか見えない契約ではない謎の虹。
私たちの身に何が起こったのかはわからないが、私の
< f i n . >
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます