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◇
『君がこうなったのはもしかしたら僕のせいかもしれないね。もしそうであるなら、君の望みを条件付きだけど叶えてあげよう』
誰かはそういった。
周囲には何もない。
ただ、泣いている少女と名前も知らない誰か。そして、私の三人。
声をかけても振り向かない。どうやら、私の声は届かないらしい。
先ほどまでは汗をかくほど暑かったはずなのに、ここは信じられないくらい肌寒い。けれど、とても穏やかで安心できる空間だ。
『君の願い、確かに受け取った。その代わり条件はこうだ──』
誰かの声をうまく聞き取れない。
へんなノイズが少女と誰かの会話を邪魔する。
「──へん─な───たみ─いだ」
聞き覚えのある声。
親しみのある語調。
暖かさのあるトーン。
そのノイズに導かれ、私は優しい光に包まれて、目の前が真っ白になった。
◇
本日二度目の夢を見た。夢自体見るのが久々なのだけど、一度目に比べ気持ちは幾分楽だ。
ただ、不思議な夢。泣いていた子が誰なのか、もう一人は誰なのか全く心当たりがない。なぜこんな夢を観たのだろう。考えても埒が明かないので気分を改め、カーテンを開け、窓と開ける。夜中の豪雨はどこへ行ったのか。お空ではまん丸の神様が微笑んでいた。秦の部屋は相変わらずカーテンで締め切られている。
「はやく学校に行こう」
身支度を整え、学校に向かう。下校は一緒でも登校は別々な私たち。
秦は寝坊助で、登校時間の早い私が行くと怒られる。
今日は学校でどんな話をしよう。
嫌な予感が当たらないことを願いながら、いつもの道を通って学校へ向かった。
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