第8話

すっかり忘れていた。いや、心の片隅には残っていた筈だ。躰は自分のものではなくなっても、心だけは売り払った覚えはない。どうして先輩が。ここに。そんなことを言おうとしたのも束の間、ベッドに押し倒され––いつかがそうであったように、また私のいつもがそうであるように、えっちをした。繰り返し繰り返し。嗚呼。どの男とも違う先輩の肌。まるでそれだけが他の人間との圧倒的な差異であるかの様に。先輩は誰よりも激しく、私を求めてくれる。二人の隔たりなどまるで無かったかの様に。

どうやら先輩は、私のことを監視していたらしい。手段は分からないし興味も無いが、卒業後に私を認めてくれる、受け入れてくれる唯一の人が先輩だという事実は、何よりも何よりも私を満たしてくれた。

先輩は去った。大学生であろう彼は、彼女との付き合いに忙しいらしい。ただ、また来るよ言ってくれたことが私の支えになった。先輩を私だけのものにするには時間がかかりそうだ。

また、この頃になると、twitterで女性器を曝け出すことには何の躊躇いも無く、逆にそれをしない日はもやもやとして気分が晴れないので、毎日のように己の躰を電子情報に変換し、それで下卑た男どもを悦ばせれる。そして夜はそんな男と肌を重ねる。そんな毎日が楽しくて仕方がない。

しかし、先輩はいつまで経っても来なかった。そんな私が心の隙間を埋めるために、ドラッグに手を出すのも無理は無かった。

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