第15話【夏・日常】

今日はセフィーと遊ぶ日だ、3日に1日これだと遠征みたいなことが本当にできない。まぁ金を稼ぐだけなら今みたいな生活で十分だ。不満はない。


それに別に毎回遊んでるわけではない、2回に1回は魔法訓練の回にしているため実は結構楽しかったりする。


本日はその訓練日だ、朝食は家でとり早速セフィーの家に向かう。最初のころは性別ばれをビクビク怯えてたがもうそれもない。今まで街の中で誰しも女扱いするので慣れた。


ランドルフなんかも男だっていったはずなのに次合った時は女扱いだ。まぁ対して変わらなかったけど。


30分ほど歩き屋敷に着く。もう何回も来すぎて新鮮味はないが門で鐘を鳴らした。 


「シオン様、アーシャ様おはようございます。セフィリア様がそわそわしてます。こちらへ」


「おはようクラレンス今日も頼むよ」


『おはです。クラレさん美味しいご飯待ってます!』


「はい、勿論です」


クラレンスに連れられセフィーの部屋に向かう、2階の中央のなかなか日差しのいい部屋にあるのがセフィー部屋だ。


ノックと共にドアが急に開かれた。


「遅いですよ2人とも!さあ、この間のボードゲームの続きしましょう!結局負けてばかりだったで再戦です!」


「セフィリア様?今日は訓練日ですよ、遊ぶのは訓練が終わった後です。だめですよ。わかりませんか?」


「ガクガク…クラレンスはこういったことは厳しい…」


「いや怯えすぎだろ、遊びは訓練後ってのは賛成だ」


『私は今からでも一向に構わん!』


「馬鹿、構えよ」


「あ!シオンさんアーシャちゃんおはようございます」


「ああ、おはよ」『はよー』


アーシャが挨拶しながらセフィー目掛けて飛び込む。この頃挨拶の定番行動だ。オッパイ枕が気持ち良いらしい。この女朗羨ましいぞ。






俺達はすでに庭にいる。セフィーと俺は体操服に着替えた。アーシャも自分で作った小さい体操服姿である。セフィーの分の体操服は俺があげました。


訓練始めた当初俺がふざけて体操服参加した時気に入ったらしい。


ちなみにブルマではない、普通に短パンルックだ。


この訓練はクラレンスも参加する。がコイツはただの動きやすいだろう服だ。勿論クラレンスにも体操服はあげたがコイツは着ようとしない。詰まらんやつだ。


クラレンス教官がビシバシ鍛えるこの訓練は実際のところ俺には意味なんてない。基本セフィーが生徒だからだ。


「先生、今日はどんなことをするんでしょうか?」


「シオン様、おふざけはなしです。【ショック】の刑ですよ?」


「イエッサー」


「【ショック】」


あばばっばばばばー、こいつはマジでヤル。冗談の通じんやつだ。だからやめて?障壁でダメージないけど演技が難しいから!


「さて、本日も基本訓練から始めましょう。魔力操作訓練始め!」


いつも通り基礎から始める、魔力を励起し心臓から全身に魔力が循環するイメージ。もうそれは呼吸のようにできるようになった。


それではただの強化のため一部に集中させたり武器に魔力を流したり、これは戦技の練習だ。


そもそも戦技は魔力を圧縮したり集中させたりした魔力運用技術に名前をつけた物でしかない。個人で勝手に名前付けたものが有名になって画一化した形になったものだ。


だから今でも自分だけのオリジナル戦技なんてものもある、大体誰かが違う名前で付けてる場合があるわけだけど。


セフィーには前にコツを聞かれたので俺なりの血流循環法を教えたところ大分やりやすくなったらしい。クラレンスも驚いていた。


本来体にある流れを使ってるわけだからこれは万人に使えるイメージかもしれない、血流の流れを教えるのが面倒だけど。


「はい、大体よろしいですね。では魔法に移りましょう」


「「はい」」


「的は用意しているので各自、的に向かって撃ってください。間違っても人に向けないように!」


「わかってます」


「了解」


次は魔法訓練だ。この訓練で始めて知ったがセフィーは基本5属性と命属性持ちらしい。聞いた時は驚いた。


普通3属性でも珍しいのに6属性持ちとかありえるのかとも思ったが事実持ってる物は仕方がない。


200万の魔力に多数の属性を操るとか才能値なんてものがあったら凄いことになってたろうと思う。


実際セフィーは勉強熱心のため色々な魔法を操る。前は魔力操作がヘタクソだったため完全な移動砲台しか無理だろと思える発動速度も大分速くなった。


最初はただのボール系の魔法で5秒展開に掛かるとか舐めてるのかと思ったし。


今ではなんと2秒で展開する、実戦でも前衛がいれば引く手あまただろう。


俺も今は時間属性を練習している、これ実際は外れ属性と言われている。この属性は効果が素晴らしいが展開に時間が掛かる、低魔力じゃ効果がショボイ。


真面目に使おうと思うと儀式レベルの用意が必要。とまぁ常人だと使えない属性ナンバー1だ。


だが俺は勿論馬鹿魔力だしアーシャのサポートもある。使えるようになったらカッコいいし便利だろうから練習している。


でもやってみてわかる。本当にこの属性はクソだ。変換式使ってから1.5倍の量使うにしたって魔力消費が激しすぎる。


加速は魔力そんな掛からないけど、停止はまぁ高魔力持ちならいけるだろう。だが回帰お前は駄目だ。


回帰は入念な儀式場を作って初めて運用できるというのは事実だった。これ使いこなしたやつはそれこそ時属性特化型ぐらいだったんじゃないかと疑っている。


壊れたナイフに回帰の練習をしていたがどうやら時間のようだ。お昼時になった。


「お疲れ様ですシオンさん、この頃そればかりですねぇ。ナイフ直ります?」


「お疲れセフィー、いや無理無理。術式弄ってるけどこれやっぱ根本的に消費がでかいすぎ」


『カッコいいなんて理由でやろうとしてるなんてマスターぐらいですよ』


「だってさー、これうまく使えば部位欠陥も戻るんだぞ?なんとか消費少なくする方法考えないと」


『儀式でやればいいじゃないですか、練成でパパっと作ればいいんですよー』


「実戦じゃあ使えねぇしぃ、さらっと当たり前に使うのがカッコいいわけだしぃ」


「シオンさんらしいです、でもそればかりだと疲れちゃいますよ?ほら肩がこんな凝ってる」


セフィーが笑いながら俺の背中を揉んでくる。


「おおー気持ちい、もう少し下で」


「はいはい」


「では屋敷に戻りましょう。着替えたら昼食で午後は3時までは体術訓練ですよ」


クラレンスがポケットから懐中時計を取り出し午後の予定を告げてくる。


そうそう、時計は普通にあるらしい。見逃していたが街でも中央広場にあるらしい。でも高級品のため持ってる人は少ない。でも現代人たる俺は絶対手に入れてみせる。


俺達は昼食を食べに屋敷に戻った。





午後訓練も終わり今はオヤツタイムだ。本日はクレープらしい。そうこの世界実は普通に生クリームやアイスがあるのだ。


冷凍は魔法や魔具でなんとかしてる。なんたって冷蔵庫があるわけだから笑ってしまう。中世よりの時代背景と思っていたがどうやらもう少し先の時代らしい。


どれもこれも物理法則を簡単に超えられる魔法のおかげだ。だがやはり一般にはまだまだ普及していない。


費用がかかるそうで【魔結晶】の消費が結構かかるらしい。魔結晶ってのは魔石を砕いて再度固めたものだ。高位の魔石以外はそうやって運用している。


練成で再度の結晶化しなければならないが、そこは再結晶用の魔具で錬金術師はいらないようだ。現代風だと電池的な役目だ。


これ実は魔石を使用しなくても作成できるらしい、魔結晶は魔力を固めたものだからだ。小さい魔結晶を作成して売ってるやつも普通にいる。小遣い稼ぎにいいらしい。


チリも積もれば山となる、街の簡単な魔具なんかはそうやって運用しているわけだ。


まぁ前の世界みたいな大規模な発電施設みたいなのがないのも変に時代が進まない要因かもしれない。


『夏はやっぱり冷たいアイスのはいったクレープが正義ですねぇ』


「だよね!運動後に冷たい物で一息つく幸せ」


「ックソ暑かったもんな、家に引きこもっていたいよ。いっそ夏休みってことで活動休止しようかなぁ」


「そしたら毎日一緒に遊べますね~」


「毎日はないかな」


『セフィーさんに養ってもらうのもありですね!』


たまにこうやってセフィーは爆弾落としてくる、いくら俺を女だって思ってるって知っていても恥ずかしくなってくる。


しかもボディータッチも多いし、こいつは百合百合なのかと疑うレベルだ。柔らかいし嬉しいけど。


「そういや昨日魔物狩りしてた時に襲われてたやついたよ」


「え!?大丈夫だったんですか?」


「そりゃ助けたからね、でもさーミノタウロスに襲われてた訳。中域の魔物がここまでくるなんてあるんだなぁ」


『ですねー、大体縄張りから出ないものだと思ってましたし』


「そうですね、そんな話は初めて聞きました」


「しかも助けるのに夢中で魔石を砕いちまった!Bランクなんて個体数少ないのに臨時報酬ゲットならずだよ」


「あまり無茶しないでくださいね?いつもお話聞いてシオンさんは強いのはわかってますけど」


「まぁ何とでもなるさ、深部なんていかないし。そんな高ランクなんてそれこそ個体数がいないんだからさ」


『マスターならSランクでも簡単ですよ!』


更にリアのことなんかを話しながらいつの間にかゲームの話に以降する。俺が作成した似非人生ゲーム異世界風だ。


やれルーレット運が悪いだのマスが意地が悪いだのセフィーは敗因の言い訳を言ってくる。


某友情破壊ゲーより全然マシなゲームなはずがセフィーは運が悪くとことん変なマスに止まる。


1回休みは当たり前、借金生活突入したり。金を落としたりと散々だったのには笑った。


対してアーシャの運は抜群で『ぶっちぎりで勝ってしまい詰まらないですねー』とか言って俺達を煽いでくるのがイラつかせる。


なので夕飯までの時間リベンジでアーシャVS俺・セフィーで勝負することにした。






夜も更けいつも通りセフィーの部屋でお泊り会だ。風呂の時間はなんとかずらしてもらいました。


セフィーは青いネグリジェ、俺は短パンに黒の半そでで既にベットの上だ。アーシャは既に寝ている。


「結局アーシャちゃんには勝てなかったですね、運がらみのゲーム強すぎです」


「圧倒的って言葉が似合うやつだよな。ポーカーでロイヤルストレートフラッシュとか初めて見たよ」


あれから似非人生ゲーム異世界風やっても勝てず、嗜好を変えトランプなんかもやったが負けた。ポーカーでは積み込みでもコイツしたのかと思ったよ。


「私ブタばかりだったんですが…」


「あれはあれで奇跡だよね」


「…運がほしいですよ」


「こんなトコで運は使ってないって思えば良いさ。肝心なとこで使えばいい」


「ですか?」


「ですです」


俺も普通のゲームでは運がいいほうだろう。でも肝心なとこではイマイチだ。前世でも若くして死んじまったし。


転生果たしたり、1000年たってて戦争回避したり、と悪運はあるけどね。


「こんな日常が続けばいいですね」


「同感」


「気が合いますね」


「だから友達なんだろう?」


「かもしれません」


そんな風に1日が終わっていく、これが此処数ヶ月の日常ってやつだ。

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