第13話【セフィーの屋敷で】

「あの御2人共、よかったら夕食もご一緒しませんか?屋敷に招待します」


「『え?』」





というわけで現在中心街のセフィーお屋敷にいます。貴族だというのに平民と遊んだり身元不明の俺を招待したりとやりたい放題いいのだろうか?


急慮増えた俺たちのため新しく夕食を作っているので「夕食ができるまで身体を清めたら如何でしょうか?」とクラレンスの一声で今お風呂中。


屋敷の規模的にはそこまで広くはない感じだったが風呂はでかく充実していた。実際水周りは魔具を使用している。


ここら辺はすべての人が魔力を所持しているお陰だろう。水には困らないなんて地球でもないんだけどなぁと思う。


この時代背景でもシャンプーとコンディショナーがあることに驚きながら身体を洗っていた。


その時誰かが入ってきた音に驚き振り返ってしまった。


そこには裸のセフィーがいた、申し訳程度に胸元にタオルを当ててるがまったく隠しきれていない。髪はアップに留めているためうなじと白い肌と胸元が目に毒だ。


「セフィー!?俺入ってるんだけど!??」


「私もはしゃいじゃって、ご一緒にいいですか?」


驚いてたところにアーシャが股間に【ハイド】をしてくれたようだ。って股間にピンポイント?確かにここで男ってばれたらヤバイけど胸がない時点で無理じゃない?


『よろこんでー皆で入っちゃいましょう!(大丈夫です、まな板にしか思いませんよ)』


「今日は始めてのことばかりです。お友達と入浴できるなんて!シオンさんアーシャちゃん洗い合いましょうよ!」


「えぇええ!?イヤ結構だ、俺もう身体洗っちゃってさ!もう出ちゃおっかなぁ!(やっぱセフィー俺のこと女だと思ってるぅー!??)」


「そんな!お願いしますシオンさん…夢だったんです洗いっこ」


『マスターまだ入って3分しか経ってませんよ、カラスだってもっと綺麗にしますよ(マスターの男要素は口調だけです、成長に期待しましょう)』




これは拷問だ…背中なのにめちゃくちゃ柔らかい、最後に彼女がいたのは18歳のころだったがその当時の彼女と全然違う気がする。


セフィーはアーシャを揉みくちゃにしながらジャレているのが救いか。


「キレイになったよ!俺は湯船に入るね!さらば!」


「なに言ってるんですか、私も背中流しますよ~」


振り向かないで、あ、見えた全部見えてしまった。ピンクだ、どこがとは言えないがピンクだよ。フルフル震えてる。


この現場を見られたらクラレンスに真っ二つになる。上半身シオンと下半身シオンになっちゃう。


「後ろ向いてくださいね!…わぁシオンさんの肌凄い綺麗ですよ~モチモチですね」


素直に背中を流されながら思う。俺の股間のマグナムよ落ち着けと。





『試練でしたね』


「命の危機は現在も進行形だけどな」


「?なにかいいましたか?」


湯船で3人入りながら現在俺は参り中だ。なるべくセフィー視線は向けないようにしながらお喋りを続けた。


「皆であんなワイワイ遊ぶとあんな楽しいんですね」


「経験なかったか?」


「はい、少し事情がありまして。この街に来たのもまだ3ヶ月前ほどだったので」


『じゃあセフィーさんは先輩ですね!私たちはまだ3日目ですよ』


「そうなんですか?じゃあ昨日はまだ2日目だったんですね。屋敷を抜け出した甲斐がありました」


セフィーは嬉しそうに笑いながらこちらを見ている。女だと思ってるんだと思うと憂鬱だ。


「屋敷抜け出していいのか?ここは魔物との前線だからやはり危ないやつもいるんだぞ?」


実際初めてセフィーを見たときは襲われていた。2日目は表通りの魔具店とはいえやはり1人だった。


いい根性だがタダの無鉄砲だろ、2日目のことは護身具を探してたとはいえそれこそクラレンスに言えば用意してくれたろうに。


「ぇーとですね。3ヶ月も屋敷に篭ってまして、やっぱ偶には外に出たいじゃないですか!それになにもありませんでしたし!」


ごまかしているのか声が大きい。いや襲われてたじゃん、俺がいなかったらやばかったじゃん。


まぁドッチボールの時の体裁きや魔力的にあのままだったらギリギリで反撃してたかもしれない。セフィーは軽い体術の心得はあるっぽいし。


「そりゃ結果論だろ、クラレンスは護衛も兼任してるんだろ?」


「よくわかりましたね、クラレンスはランクAAクラスの騎士ですから一騎当千です!」


自慢するように声が弾んでいる、どうやら信頼関係もかなり高いようだ。それにしてもAAランクなんて凄まじい。


なんでこんな辺境で護衛兼執事なんてしてるんだか。実際120万もの魔力だ、ランドルフとの差が酷い。


「そりゃ凄いな、信頼するのもよくわかるよ」


「よく文句言われますけどね」


『セフィーさんお転婆ですもんね』


「そんなことないですよ、私はお淑やかです!」


『遊んでた時あんなハシャイでたじゃないですか』


「確かに!外野から見てた時は外見差が凄いことになってたぞ年齢は3つぐらいしか離れてないはずなのにね~」


「うぐぅ…シオンさんは完全に溶け込んでましたけどね!」


『あっはははは!マスタ反撃されてますよ』


痛いとこを付いてくるな、分かっているさ俺は完全にあのグループに入っていたさ!コミュ力高いからね!


「友達できました。今後はあの子達と遊びます」


「っちょ、仲間はずれは嫌ですよ!」


なんだかんだで風呂を楽しんだ、【ハイド】で股間を隠した自分の姿は完全に金髪美少女だったのが記憶に深く残ったのだった。









風呂から上がり3人で話していると夕食ができたようだった。俺たちは食堂に向かった。


セフィーとは隣だ。夕食はどうやらパスタらしい、バケットとサラダにチーズフォンデュもついていた俺にとってはご馳走だ。


アーシャ用に小皿を貰い分けながら食べる。美味い…これが本場の味か!


「御2人とも美味しいそうに食べますね。っふふ、美味しいですよね自慢のシェフさんなんですよ」


「ご馳走になって悪いね、マナーとかは勘弁してくれよ。そこらへんは空の向こう側だ」


「ここにはそんな煩い人はいませんから大丈夫ですよ、美味しく食べてもらったほうが楽しいです」


セフィーはそう言ってくれたが、クラレンスはセフィーの後ろに控えている。


無表情からはなにも読み取れないでも無言の圧力を感じるのは俺の気のせいですか?


『こんな美味しい食べ物があったんですね…生まれてよかったです』


「アーシャ大げさ、でもないか?ごめんねマトモなもの食べさせれなくてさ」


「いつでも入らして下さい、料理だったらご馳走しますよ」


「アーシャを甘やかしちゃいけないぞ!コイツは言質を取ったら迷わずくる!遠慮なんて辞書がないやつだから」


『失礼です、それはマスターだけですよ。私のト・ク・ベ・ツですから』


「嬉しくねぇ」


その後もメインの肉料理、デザートと俺達は全力で楽しみつつ料理を食べまくった。




「美味しかったー、もう食べれない!」


『またお願いします!』


「はい、お粗末様です。いつでも大丈夫ですよ」


もう夜も大分更けている。流石にこれ以上は迷惑だろう。俺としてもまた外壁越える必要があるしそろそろ御暇しよう。


「部屋は用意してるんで今日は泊まっていってください」


「え?」


「こちらです行きましょう」


え?





結局泊まることになった。クラレンスも文句はないようで、こんな夜更けに少女を外にやれないとか。そりゃそうだ。


別室が用意されていると思ったらまさかのセフィーの部屋だった。クラレンス止めろよ。いくらなんでもこれはヤバイだろ?知り合って逢って2日目なんだけど?


何度か断ったが押し切られた。友達と寝ることが夢らしい。何個夢があるんだよ!


結局同じベットで寝ることとなった。美女とベットイン言葉面は最高ですが皆さんどう思います?


「シオンさん起きてますか?」


「バリバリぎんぎんだ」


「なんですかそれ」


笑い声が真横から聞こえる。めっちゃぎゅっとされている。抱きしめられて胸を押し付けられてお前の胸がヤバイ柔らかくて俺がヤバイ。


「本当こんなことができるなんて今まで想像もしてませんでした」


「…」


「私今までローレイン家でお母様とクラレンスの3人で暮らしていたんです。勿論楽しかった。私は貴族の教育は最低限だったので自由時間もありましたから」


「うん」


「でもお母様はもういなくて、ここに移されて。クラレンスしかいなくて。でもローレインじゃないなら今までとは変わるんじゃないかって」


「うん」


「3ヶ月も結局決心つきませんでしたけど、でもおかげでシオンさんと逢えました」


「うん」


「ドッチボールも楽しかったです。一緒にお風呂はいって、ご飯食べて。寝て。これからもこんな生活がいいです」


「…うん」


「偶にでいいんです。また一緒にいて下さい」


「わかったよセフィー、俺達は友達だもんな」


ああ、やっぱり15歳なんだと思う。見た目成熟した女性でも子供と一緒にハシャイで当たり前の会話で笑って、そんなことで満たされる。


だから、これからも友達でいたいと俺は思いながら意識が薄れていった。








『ますたぁー、もう食べられませんー』


「っむっぐ、ベタすぎるぞアーシャ」


顔に張り付いてたらしいアーシャを放りながら起き上がる。横にはまだ眠ったままのセフィーがいた。着ていたネグリジェが着崩れして谷間が丸見えだ。エロイ。


まだ朝は早いようだ。かといって2度寝もする気が起きない。とりあえず起きることにした。


日差しがあるためセフィーの部屋が良く分かる。女の子らしくヌイグルミも結構あるが全体的にはシックな部屋だ。本棚には大量の本もある。


基本術式などが記載されている指南書の類が多いようだ。200万以上の高魔力を活かそうとする努力が現れているのだろう。


何点か本を抜き取り読んでいく。基本のボール系やランス系、Cランクぐらいの術式まで書かれている本もある。


俺は儀式系のSランク術式まで扱えるが昔の術式だ。今の術式は結構効率が悪い術式が多いことを確認しつつ本を閉じた。


どうやら術式も少し後退しているらしい、世界大戦で失伝してしまった部分もあるようだった。


部屋を眺めながら俺は急にトイレに行きたくなり昨日教えてもらっていた場所に向かうため部屋から出た。



「トイレ~、どこだっけ?」


「シオン様、お早いですね。おはようございます」


トイレを探してきょろきょろしてた俺にクラレンスが朝の挨拶をしてきた。


「おはよ、ちょうどいい所に。トイレどこ?」


「ここの廊下の突き当たりですよ」


「ありがと、クラレンスは鍛錬?ラフな格好してるし」


「ええ、毎朝庭で少し時間をいただいています」


「ねぇよかったら一緒にやらない?ランクAAらしいじゃん」


「セフィリア様ですか…構いません、私もシオン様とは一度手を合わせてみたいと思ってましたので」


「おっしゃ、AAの実力者なんて滅多にいないもんな!庭行こうぜ!」


「その前に…大丈夫ですか?」


「え?」


「そのお花摘みに行かなくてもよろしかったので?」


そうでした、てかお花摘みね…やっぱクラレンスも俺のことは女と思ってたわけだ。そりゃそうか!じゃないとセフィーと一緒にしないもんな!


「そうだった、先庭いってて。直ぐ行くよ」


「…はい、お待ちしております」


クラレンスは恥ずかしそうにこちらに頭を下げ庭に向かっていった。恥ずかしいこと言わせてゴメンナサイ。






クラレンスは細身のエンチャントの掛かった長剣で素振りをしていた。


「お待たせ、わるいね」


「いえ、型の確認をしていただけなので。準備運動はよろしかったので?」


「最初は手加減してくれればいいさ」


「そうですか、では」


俺も二挺拳銃を取り出し構える。こちらの実力を信頼しているのかクラレンスも真剣で対峙していた。


長剣のエンチャントは基本的な復元と硬化、更に増幅もエンチャントしているのがわかる。増幅系は魔法効果を高めるものだ。


武技にも対応しているため高ランク武器には大抵付加されているものだろう。


相手の魔力は120万とランクに見合っている。こちらもそれに合わせ今回は60万ほどで強化、ランドルフ戦とは比べ物にならない強化だ。


相手も同じだけの強化を施しているのが見える。そして同時に駆け出した。


互いに武器を断空で強化しぶつけ合う。



っく、重い!武器の重量的には勝っているはずだが遠心力がのった一撃はすごいな、だけど!


衝破で距離を開け刃引き版の【フォトンブレイド】を5個発射する、クラレンスは冷静に雷属性をエンチャントした剣で叩き落した。


模擬の弾丸なんてないため銃を媒介に【フォトンパレット】弱設定を連射する。これなら弾丸を撃つ速度で放てる。


クラレンスが疾駆で避けながらも魔法強化をしていく、雷属性の速度強化と反応強化だ。


更に一段速くなったクラレンスが一気に間合いを詰めてくる。右手での縦切りをこちらも疾駆で避けたが、左に急に武器を持った。短剣だ。


そのまま左短剣での突きをこちらも弾き飛ばして間合いをとる。


「長剣1本じゃなかったのか、ディメンションから取り出したんだ?」


「ええ、シオン様もそれは銃ですか?珍しい武器ですねそういった刃がついた銃は始めて見ます」


「銃知ってるんだ?うん、今回は媒介として使ってるだけだけどね。弾丸じゃあ当たったら危険だし屋敷に傷つけるわけにはいかないからね」


「お気遣い感謝いたします。ではそろそろ少し本気で行きましょうか」


「お手柔らかにお願いするよ」





あれから1時間ほど模擬戦を続け終わりにした。


まさかこれほどとは思わなかった。強化し魔法も併用した彼はかなり速く、昨日の遊びでも見せた緩急も相まって消えるように間合いを詰めてくる。


俺と同じ手数と圧倒的な速度でのヒットアンドアウェイは攻略が難しい。雷属性での付加斬撃も武器を伝って一々鬱陶しい。


強化してなかったら失神するほどの出力できた最後らへんは苦労した。まさに魔剣士だった。


「流石AAランク、強いわ」


「いえいえ、私の攻撃が何発か掠ったのに全く効いた様子もなく向かって来たシオンさんのほうが凄いですよ」


これは勿論、待機型障壁【アイギス】の効果だ。雷属性は掠っただけでもダメージが普通いくがそこは全部障壁が防いでくれた。


正直錬度では彼には届かなかった。こちらの体術も銃術も全部止められ、魔法も弾き飛ばされた。


勝つには更なる強化でのゴリ押しか高威力魔法でなんとかするしかないだろう。


俺達は武器をしまい顔をあわせた。


「1つ聞きたいんだけどいいか?」


「如何いたしました?」


「なんでセフィーと共にいるのを許容した?自分でも何だけど身元不明の実力者だぞ?」


「ええ、それは最初は私も警戒いたしました」


「だろうね、図書館では威圧すごかったし」


「ですが、子供達とあそこまで無邪気に遊ぶシオン様を見て気が抜けました」


「はぁ?」


「それにセフィリア様が警戒もなく近づく方だったので、あれで意外とセフィリア様は人見知りが激しい。危険な方には近づきません」


人見知りねぇ、子供と遊んでた時はは随分警戒心なく遊んでいたが。


「それにセフィリア様がああも笑ってたのは3ヶ月ぶりです。私には止められなかった護衛失格ですかね」


「そうか…馬鹿なことを聞いたな。稽古相手ありがとう。また頼むわ」


「こちらこそ、シオン様は私と同格ほどとお見受けいたしました。私からもお願いします」


その言葉に俺は否定せず流した。実際向こうは本気はだしていないだろう。こちらもアーシャの補助もなく弾丸も使用せず魔力も制限してたわけなのでお相子だ。


「そろそろセフィーもアーシャも起きただろうし戻ろう」


「かしこまりました」


クラレンスはこちらにお辞儀したのを確認し一緒に屋敷に戻った。





セフィーはアーシャと共に既に着替えて食堂にいたようだ。仲良くなにか喋っていた。


「シオンさん!どこいってたんんですか?朝起きたらアーシャちゃん床で伸びてるし心配しました」


『本当です!起こしてくれても良かったじゃないですか』


2人とも俺がいないのを心配していたらしい、その割りに仲良くお喋りしてたようだったが。


「クラレンスと少し稽古をね。悪かったよ。ほらもう朝食なんだろ?またご馳走になるよ」


「それは全然構わないんですが…うー朝のおはよう計画が。あ、シオンさんお早うございます」


『おはようございます!』


「おはよ」


「御3方、朝食の準備が整いました」


クラレンスは既に執事服だ、俺はクリーンで体を清めたが彼はそんな時間なかったはずなのに清潔感たっぷりに用意済みのようだ。どうやった…





朝食まで頂きなんのお礼もできないのは心苦しかったがそろそろ出たい。また今度は門からでて獲物でも取りながらギルドに換金しにいかないといけないし。


セフィーとクラレンスに礼をいい俺たちは屋敷からでた。今度は普通に街からでるため目指すは門だ。


『美味しかったですねー』


「あの食生活が保ちたい、料理の腕をあげないとな。今度料理本でも買ってみるか?」


『賛成です!マスターが上手くなれば私も今後に希望を残せるというものですよ』


「お前はまったく…料理を作ろうという気概はないのかぁ?」


『サイズが足りません』


「魔法があるだろ…実は結構なんとかなるのは知ってるんだぞ」


『キャパがタリマセン』


「おい!」


馬鹿いいながら俺達は歩き出した。

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