第7話【外にでた日】
転移で移動した場所はどうやら深い森の中だったようだ。いきなり出た場所がこんな日の光すらも遮るような森とか幸先よくないなぁ。空を見たいのにこれとは。
右も左もわかんない、さてどうしようか。サバイバルとか自信ないし、食料にはまだ余裕があるけどいい加減あのブロック食品からは卒業したい。肉食べたいよ…。
「アーシャこれはどこいきゃいんだ?つか先のことぐらい考えりゃよかったと今果てなく後悔しているだけど」
『今いる場所は極東に位置します、1000年前ですが。なので西に進むことがお勧めですね。とりあえず地図は作成しときます進んだところが地図として記録していきますので進むしか道はありません』
「サバイバルか、自信ねぇ。20mはありそうな感じな大木ばかりだよ。いきなり挫けそうだ。いっそ【バニシングレイ】で道を作るか?」
『ドン引きです。もしかしたら近くに人里があるかもしれないですし。流石にお勧めはできません。まぁ【サーチ】したところ半径1kmには街などはなく森ばかりですが』
「いつの間に…。オーケイとりあえず肉眼で確認したい。跳ぶか」
俺はリベリオンを取り出し真上に向けた、1kmも森なら大丈夫だろと思い【バニシングレイ】を発射した。
ドンと力強い発射音と共に銃口から真紅の極光が奔っていく。極光は上で空を塞いでいた枝を消しとばし空へ消えていった。
「やばいちょっと、いやかなり感動した。すげぇ!自分でやっといて驚くしかねぇな!」
『いきなり自然破壊ですかマスター?感心しませんよっ』
「事情が優先です!手段は選べないってことでカンベンな。ん、とりあえずジャーンプと」
身体強化しつつ【疾駆】で大ジャンプをした。結構な強化をしたため一気に20mは跳んだそのまま即座に【天駆】でさらに駆け上がっていく。
100mほどの上空で障壁を展開足場にして滞空し回りを見渡してみた。
「見事に森しかねぇなぁ。大森林って感じだよ。で西ってどっちよ?」
『今マスターが向いているほうから右手側ですよ。ですがおかしいですね。ここはこんな森林だったでしょうか…』
「そうなのか?」
『はい、ここまで跳べば人里ぐらいは見えるはずですが。どうやら1000年の月日は想像以上に現状を変えているようですね』
「1000年か、俺の世界だとこんな明らかに現代でもないような銃をつくってるんだし1000年も経ってれば正直文明的にも進んで機械的なものが溢れた世界になってりゃしないかとも思ってたんだが」
『それは私も予想のひとつには入れていました、だからこそ訓練してどんな場面でもなんとかなるようにしたんですが。施設周辺の結界は維持されたまま。解析や破壊を試みた形跡すらありません。さっきの【バニシングレイ】でハジケ飛びましたけどね!』
うん、そりゃすまんことをした。でももう必要もないだろう、俺が生まれた時点でここは役割を終えたんだ。本望だったろう!多分。
「まぁ、西だな!進もう。日のある内に開けた場所に行きたいし」
『ですね』
強化は継続しそのまま空を走ることにする。森の中では方向感覚もわからないし進みも悪いだろうしな。
ちなみに空を飛ぶ魔法はない。新規開発しようかとも思ったが。空を走れるなら余りいらないし。重力魔法で無重力化して後ろに魔力放出で飛ぶとかできなくはないだろうけど怖いわ。必要になったら考えるってことで。
強化した肉体は素晴らしい速度で景色を変えていく、多分時速100kmはでてる空気抵抗は無属性防御魔法【プロテクション】で防ぎながら走る走る走る!!
体力も丸1日戦える身体にとっては問題ない。どんな属性か知らないが施設を覆っていた結界の地点を当に越したらしい、下には生命の気配がする。
どこかで肉も捕りたいなぁ、アーシャ!デカイのいたら教えてくれ!狩りをするぞっと!
「フラグだったか」
目の前には3メートルほどの薄緑色の竜がいた。
『ドラゴン種じゃないですね、ワイバーン種のなかでも平均的な種ですよ』
アーシャの解説を耳にはしたが悠長に会話なんてさせてはくれないらしい。一気にこちらにやってくるワイバーンに多少ビビりながら二挺拳銃を取り出した。
距離はもう100mもない、でも焦りはない。どうやら訓練は伊達ではなかったらしい。脅威なんて感じない。魔眼でみてもワンバーンは対した魔力は持っていない。言ってはなかったが俺は魔眼持ちある、魔力を可視化するだけだが。
感知能力もあるためアーシャのサポートもあり相手の魔力の数値化もお手の物だ。ちなみにワイバーンの魔力量は13万ほど。
肉を確保したいし狙いは頭だ。右手にもったヴェンデッタで狙いをつけ即座に弾丸にエンチャント【ブラスト】を行ない発射。
あたりまえのように頭部に当たり頭の中で爆発し頭部が四散した。
「一発か…オーバーキルだったなぁ、頭の原型なんてまったくないぞ」
『マスターは1000年前の基準でSランカーほどはあるはずですからワイバーンなんて所詮はCランク雑魚です』
「Sランク?何階級あるんだよ」
『G~Sまでですよ、Aからは、AA・AAA・Sという形になってますね。10段階評価ですね。Sは超越者専用のランクってやつですよっ!』
「ぇ?」
『基本敵はいません』
「ぇ?」
『しかも、待機型の4重障壁【アイギス】があるため奇襲なんかも効きません!』
「詳しく」
『もう大分走ってきましたしワイバーンも解体しなきゃいけません、障壁の件は後ほどに』
ワイバーン解体は例のごとくインストールされていたため捗った。初めてでもどうやるか分かるのは若干気持ち悪いがもう今さらだ食えそうな部分を確保し素材や魔石はアーシャへ突っ込む。
「ふう、日が落ちてきたなアーシャあれだして」
『プレハブです』
森はまだ全然抜けてないがとりあえず多少は開けた場所があったためプレハブを出してもらう。アーシャの拡張空間は膨大だ。なんでも入りますとか豪語していたし。そのためあの200日でこういったものを作成してもらっていた。
ドンとでてきたのはどう見ても中が3畳程度しかないようなプレハブだ、勿論これは魔具である。中は拡張されており見た目以上の空間になっている。
なんと3LDKのマンションの1部屋のような感じになっている。正直施設内の居住区より全然快適だ。あそこにあった素材なんかは全部家具に練成しなおし
こっちに移動させている。え?訓練中使用しなかったのかって?カリキュラムになかったんだよ。一兵士には勿体無いとかいってさ!
安全確保のためプレハブ周辺に結界と念のためゴーレムを置いておく。プレハブ自体強度はかなり高い、実際【バニシングレイ】でも壊れないらしい。
けど警戒して損はないしね。
中に入り玄関で【ドレスアップ】で靴ごと黒ジャージに変更する。黒ジャージも作ってもらいました。アーシャマジ万能。
土足は日本人には耐えられませんよっと、廊下を超えリビングでやっと一息ついた。まさかこうまで進まないとは思ってなかった。
少なくとも人里にはいると踏んでたが予想通りにはいかんもんだ。水筒を取り出し一服する。ああ、これ魔具な魔力込めると水がでるやつ。
「それで?障壁って?」
『なんのことですか?』
「からかっとんのか!」
『イエス』
「第76回目の喧嘩の開催かなぁ!てめぇ表でろぉ!」
『冗談ですって、ここまできてとか面倒ですよ』
「で?」
『マスターには待機型の4重障壁を体表に展開しております。一定の衝撃を感知結界で認識すると展開されます。外は何があってもおかしくないですからね
少なくとも魔物の固有魔法エクストラは危険です。いくら超越者クラスでも保険はしっかりと対処するべきですから』
「確かに理にかなってるな、だが聞こう。これいつにできてた?」
アーシャがピカピカ点滅しだした。ごまかそうとするとこればっかだな、動揺してんの丸分かりで実によろしい。つまり…だ!
「おま、大分前からできてたのか!それがあればあのクソゴーレムに苦戦なんぞしなかったんじゃねーかぁ!」
『これでマスターは無敵ですよ!実質マスターの魔力が尽きるほどの馬鹿威力の攻撃でも受けない限りこれは壊れません!それは流石にないでしょう!』
「スルーすんなし、俺の苦労は?あの死闘がとたんに茶番になった気分ですよ?精神攻撃にしちゃあ苛烈すぎやしないかい!?」
『無駄じゃなかった!あれは決して意味がないわけじゃないですよ!この障壁は完全に無敵なわけじゃないんですから』
「ごまかしてない?」
アーシャはまだピカピカ点滅している、怪しい。
『魔物のエクストラは本当に多種多様です。少なくともSランクのドラゴンのエクストラは魔力分解能力ですし。そういった天敵には障壁なんてゴミですから!
戦闘経験地は持っていて損なんて絶対ありませんよ。実際マスターもあれで壁を越えた実感はあったでしょう?』
「むう、そう言われると反論できない。確かに接近戦なんかは擬似経験あっても下手な感じはあったけどあれで自分の物にした感はあったが」
『でしょう!それではあれはプラスだったってことですよ!」
「わかったわかった。飯にしよう、やっと肉が手に入ったんだ食わなきゃ損だ」
キッチンに移動し調理器具も出していく、ちなみに家のキッチンは現代2015年風である色調は黒を主体としたかっこいい作りだ。
正直料理には自信なんてない、一人暮らししてたわけでもないただの学生だった俺にそんなスキルはないが流石に焼くことぐらいはできる。
フライパンにアーシャに保存してあった塩や胡椒、食用油を取り出していく。これも食材はないがこういったものがアーシャにはあった。素材は現場で取れってことらしい。
ステーキサイズにカット量は適当で、下味は塩胡椒だ。フライパンに油を引き強火で焼いていく。個人的にはミディアム派なので3分ほどで引っくり返し裏面も焼いた。
「完成~」
皿に盛り付け、付け合わせなんてないからステーキだけだが。リビングに持っていく、さて実食!
「!?うまい、熟成とかないのにこれか!今まで食ったどんな肉よりうまいぞ、ワイバーンって肉食だし期待はしてなかったのにな。いい意味で期待はずれ?」
『マスター私にもください!』
「!!!??」
目の前に15cmほどの妖精がいた。縮尺はおかしいが多分15歳程度、紅眼で腰まである長い紅髪。服装は真紅の肩口の開いたドレス姿で背中には半透明の4枚羽根の美少女な容姿の子だ。
いつのまに?今まで気配なんぞまるでなかったのに、だれだよ!?
『マスター?』
「お前、だれだ?」
『なに言ってるんですか?アーカーシャですよぉ!』
「ぇ?」
魔眼を凝らして改めて見てみる。魔力の色と波長は俺と同一の真紅だ。ここまで同じなのは魔力を共有しているアーシャか作成し俺の魔力で動いてる存在しかありえない。
「お前アーシャか!?なに?実体化なんぞできたわけ?」
『これも用意したことの1つです。人がいるところじゃ喋れませんからね。これなら問題なしです!妖精なら多分大丈夫かと思いまして、作ってみました』
「なるほどー、なんかお前といると驚いてばかりだな。エクスクラメーションマーク全開だっての」
『それよりもマスター、私にもお肉くださいよう』
「まさか、そのために実体化を?」
『なんのために五感まで再現したと思ってるんですか!私は楽しみたいです!』
こいつ、美味い物が出た途端これかよ。絶対これも訓練中にはできてたんだな…でも、レーションには興味の欠片もなかったわけだ。
本当アーシャのやつ自由だな!第一人がいる所では【テレパシー】で意思疎通なんて簡単だし。絶対趣味だよ。
「わかった…好きにしろよ」
『やった!』
アーシャは器用にも手元にブレードを展開しステーキを1口サイズに切り取り頬いっぱいに味わっていた。
最初はこんなキャラじゃなかったはずなんだがねぇ、初期の印象とは180度変わった気がする。人口魂魄を封じられた魔石が本体なのでアーシャは生命体に近いのかもしれない。
俺と日々の暮らしの中でドンドン感情豊かになっていったし。
まぁサポートは問題ないし、マイナスになることは絶対にないものだしいいけどさ。なんかいつも驚かされるよ。
「さっさと食って風呂はいって寝よ」
そういって俺はアーシャに食い尽くされる前にステーキを食べ始めた。
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