第8話【街に着く】

日も昇り今日こそは人がいる場所にいくぞとと思いプレハブからでた。


「引き続き西へ向かう、現時点で施設からは相当離れたはずなのにまだこんな森の中―――方向間違っちゃいないかねぇ」


『わかりません、情報が不足してます!』


アーシャはすでに実体化を解いている。維持するのは簡単らしいが維持する理由がないからだ。これから移動だしね。


「今日は更に飛ばしていくぞ!正直人に会えないのは不安すぎるからなっ」


『イエス、マスター』







更に速度を上げ西に向かって体感で約4時間ほど、どうやらやっと森から抜けるらしい。正直かなり嬉しい、もう森しかないかなと疑ったし。


ここからは人がいるかもしれない、慎重に動くためまばらになった林に着地し地面を走ることにする。そのまま走り続け林も抜け草原になると道があった。


「道だ!明らかに人の手が入っているぞ!とりあえずちょっと疑ってた人類滅亡はないっぽい!よかったぁ」


『ですねー、私もドキドキでした。何度こんなはずではと思ったか』


「とりま折角の道だしここに沿って進むのが近道だよなぁ、でも微妙に嫌な予感がするんだよなぁ。現地人がどうなっているか遠くから確認したい。

道でばったりとかちょっと怖いなぁ」


『また空から見渡してみますか?【サーチ】で探ってもいいですが』


「肉眼での確認のが予定は組みやすい…はず。跳ぶぞ」


かといって今まで通りだと目立つので即座に【ハイド】を展開し姿を消す。これは所謂光学迷彩だ、光を捻じ曲げ姿を消す最高に便利な魔法。気配も消せば間違いなくいけないことができます。そんな予定は今のところはないが。無論普通ならこれは欠点がある、激しく動くと違和感を感じたり【ハイド】が解ける点だ。そこは俺の処理能力とアーシャのサポートで大分改善している。隙はない。


今度は更に上空へ滞空する。多分地表からは500mは離れたはず。あと勿論この世界も星であるため地平線がある余りに遠いとどんだけ頑張っても見えないのは一緒だ。


「どうやら頑張った甲斐はあったようだぞアーシャ」


『城壁らしきものがばっちり見えますね!あの規模だと間違いなく街のレベルですよ!』


「【ハイド】は維持したまま行こうか。あんな壁が街を覆うぐらい厳重だとは思ってなかったし。俺たちちょっと不審者だし」


『女の子に見える子が一人旅。更に明らかに人なんて住んでなさそうな森方向からくる。しかも手ぶら。身分証やお金もない。アウトですね』


「だよねぇ…とりあえず門を目指す先のことは後だ!」





【ハイド】で姿を消したまま門へ着いた、どうやら硬く閉められている。というかこっち側は人の出入りは考えてられてないようだ。

監視者っぽい人がいるのみ。視力を強化し細部を観察してみると騎士みたいな格好をしているのがわかる。しかも見えるだけでも10人以上の監視者だ。

あんな森が近くにあるわけで、モンスターもいる最前線的な街なのかね?それだと普通砦みたいの置かないのかと疑問に思ったが。情報不足で事情はわからない。


「【ハイド】してて正解だったわぁ、これ見つかってたら逃げる1択だったな」


『いきなり指名手配的な感じになりましたかね?』


「流石にそれは…とりあえずここは駄目だ。他の門を探そう。ここだけなんて不条理なことはないはずだし」


正直このまま外壁を乗り越えてそのまま侵入してやろうかとも思ったけどやめとく事にする。そのまま外壁を伝って右方向へ移動し別の門を目指した。


そのまま走り1時間ほどでどうやら違う門についたがここも監視者だらけ、あきらめ更に進む。


1時間ほどでまた違う門についた。どうやら最初のとこから反対側に着いたらしい。普通に門も開いている、街に入るであろう人も結構いた。


「どうやらここからなら普通に入れるっぽいな」


『ですが通行者は身分証などの提示が求められるのでは?』


「・・・・・観察しよう、ここでしくじるわけにはいかねぇ、人生かかってんだ」


『いきなり失敗したら新しいですね』


「なんのことだっての!」



姿隠したまま観察して見る。やはり身分証の提示などを求められているみたいだ。商人らしきやつらは何かしらのカードを提示しそのまま街に入ってく


皮鎧を着込んだマッチョの傭兵?らしき連中も似たようなものだ。カードの提示程度で簡単に出入りできるらしい。


お?こいつはどうやら身分証はもってないっぽいぞ。よく見ろよ俺!ここが正念場だ!!


質素な服装に身を包んだ4人組みが硬貨らしきものを支払い臨時の手形らしきものを受け取り通過してく。


「どうやら通行税か保証金か、とりあえず金を払えば通れるようだな。よしアーシャ金をだしてくれ!」


『ノーマニー』


「金を出してくれ!」


『ナイソデハフレヌ』


「―――詰んだ」






さてどうしよう。やっぱ身分証も金もないのは致命的だ。さっきの金を支払ってたやつらは銅色の硬貨を5枚ほど支払っていた。なんとか金を確保したい。


これは、そこらへんのやつから身包み破ぐしかないか?ちくしょうまさかこんな所で足を引くとか世の中甘くはないってことかぁ。


「流石に追い剥ぎはやめよう」


『なるほど、不法侵入ですね』


「うむ、とりあえず街に入る。その後は…なんとか金を得る」


『カツ上げですか?』


「そんなことはしない!ただ街には素行の悪いやつがいるはずだ。どうやら見た感じ時代背景は中世っぽいし。そいつから適当に巻き上げて」


『カツ上げじゃん』


「そうとも言う」






「お~、こりゃすごいわ。文明的に現代日本よりかなり遅れてるとか思ったがどちらかというと異文化って感じだ。新鮮だわ」


外国にいったらこうなんだと思う。施設でた段階で似たようなもんだが。石器時代的な。


『なるほど、やはり1000年前より後退しているようですね。一体何があったんですかね』


「そこらへんの疑問は追々だな。今いるのはこの時代ってことで」


俺はあの後すぐに外壁を乗り越え街に侵入に成功していた。特に魔法的な防衛機構なんてなく結界なんてものもない場所だったのが幸いだった。

やはり街並みは俺がイメージしてた中世ヨーロッパ風だ。道路なんかは石畳を敷き詰めたようなタイプになっている。ガタガタしているかとも思ったが。

ピッタリ敷き詰められているため歩きやすい。よく昔は道路に排泄物なんかが捨ててあったとかいうがここは衛生面も問題ないのだろう綺麗なものだ。


「どうしたもんかな」


ちなみに今俺は建物の上にいる、さっさと【ハイド】を解除してそのまま街並みを楽しみたいところではあるがこちとら不法侵入だ。

金を手に入れて改めて真正面から入るまで目撃者は少ないほうがいい。てか目撃されたくない。


『人相が悪いやつでもちゃっちゃと襲撃しちゃいましょう。大丈夫です、ばれやしません。どんな貨幣制度か知りませんが何人かボコボコして銅貨5枚ほど手に入れましょう!』


「お前意外と過激だな。いやヤルけどね。どんな風に取り繕っても結局似たような話だし」


建物から周りを見渡しつつ走りまわっていた。この頃上から見渡すことが多いなと思いつつ獲物を探っていると若い女の声と威嚇しているのかドスのきいた声が聞こえた。


「だれか!助けて!イヤッ触らないで!助けてください!!」


「抵抗しても無駄だ、こんな裏路地にお前みたいな若いやつがいるのが悪い。大人しくしてれば命まではとらねぇよ!」


「さっさと口塞げ、騒がれちゃたまらんにしてもこんな器量よしなんて人生初めてだ、さっさと犯っちまおう」


オイオイ、こりゃテンプレってやつか?なんてラッキーなんだ。ボコってもいいやつが現れるなんてツイテるぜ!


俺はその現場に急いだ。






どうやら女性1人と男2人、強姦現場に遭遇したらしい。街並みは綺麗なのに治安は悪いのかもしれない。まぁ女性側は運がいい。俺がここにいるんだから。


警告なんかしない、そもそも今だに【ハイド】中だ。さっさとボコって巻き上げよう、良心が痛まないのは本当に助かるね!


襲っていたほうの汚い男の側頭部に蹴りを入れる。そのまま一緒にいた男の顎にショートアッパーで殴り飛ばした。


悲鳴1つ上げずに男2人は気絶したようだ。不意打ちで頭部に衝撃食らわせたんだピンピンしてても困る。


「え?ぁ・・・一体何が?」


女性のほうは困惑しているようだ、改めて女性のほうを見てみて俺は息を呑んだ。


とても綺麗な銀髪の長い癖のない髪、まるで宝石でも埋めたかのような美しい蒼い瞳。日の光なんて当たったことのないような真っ白な肌。

身長は俺よりも高く目算で165cmほどのスレンダーな印象なのに出るとこはでている。

それこそ今まで見たことのない美しい人がそこにはいた。


「綺麗」


(『マスター声でてます!シーですよ!』)


(「っやべぇ、声でちまった・・・。気づかれたか?こんな人とは思わなかった。つい声にでちまった」)


「今、声が聞こえたような?」


銀髪女性は着崩れた服を調えながら怯えたように周りを見渡している。


(「参ったなぁ、この人どうしようか」)


(『この方も気絶させて金めのもの盗っちゃいます?』)


(「助けた意味ないじゃん、この人の服装的になんかお偉いさんみたいなオーラを感じるし。今は関わらないようにしよう。」)


この女性が強姦2人に変なちょっかいを掛けられる前に強姦共から物資を頂戴する。服なんて要らないから腰に入れていた巾着らしきものをとり土魔法で拘束した。


陣が発生して拘束したのを見てたのか女性はかなり驚いてる様子だ。そんな女性を意識して無視しその場を離脱した。







屋上のある建物で一息つく、巾着は2つじゃらじゃらと音がするため少なくとも硬貨が複数入っているはずだ。ここで目的を達せれれば助かるんだが。


『マスター魅入ってましたねぇー』


「ちょっオマ!」


『一目惚れですかぁ?強姦されそうな女性を颯爽と助けるなんて運命的ですよ!まぁ姿を消してた上に金を盗りその場からさっさと消えたんじゃぁ微妙ですが』


「いや…だってよぉ、声でもかけりゃよかったって?俺が相手の立場だったらゴメンだぞ?姿かくして問答無用で男2人をボコるやつに会いたくはない」


『フラグを逃しましたね』


「まぁいいじゃねーの目標は達した、あの女性も問題ないだろーよ。それよりも戦利品を確認しようじゃないか!」


言いつつ巾着2つから床に硬貨をぶちまける。あんな身形の屑共のわりに意外と中身は充実していた。


銅貨×18・銀貨×3それと鉄色の貨幣も7枚入っていたようだ。


「銅貨と銀貨は価値は兎も角この鉄色のやつは金なのかねぇ、装飾的に金っぽいし。貨幣制度を速いとこ確認が必要なわけだな」


『これで正面から入れますね!』


「だな!さっさと通行手形とって身分証になるようなものを作成しよう。金も無駄遣いはできないしな!」


金を集め一纏めにして巾着を再練成、小汚いやつから真っ黒の巾着へ入れ腰に着けてその場から消えた。






「ふぅ、緊張した」


『私も特に突っ込まれず済んでよかったですよー』


アーシャも実体化してすでに街の中だ。門で一悶着あるかと緊張したが特になく、金を払い証明証をもらい無事はいることができた。

町の名前はヴァレイグとかいうらしい。アーシャは使役獣扱いで制限はないらしい。問題おこさなきゃいいが使役した存在が何かすれば責任は俺にかかるとか。


「アーシャが妖精扱いでよかった、とんでもない化け物だったら流石にあんな簡単ではなかっただろうし」


『抜かりありません!計算通りですよ』


「意外と時間かかっちまったなぁ、もう夕方だよ。宿探さないとプレハブ置くとこなんかないしなぁ」


土地勘なんてあるわけない、表通りをふらふらしながら見て回る。武器のマークの看板やら杖のマーク、結構な規模の酒場?らしき所は見つけた。

どうやら余り文字を使ってないらしい。識字率は良くないのかと思いつつ俺自身も文字が読めるとは限らない。

1000年前の共通言語は読み書き共にできるようになっている。少なくとも言語自体は、さっきの強姦騒ぎで喋ってるの理解できたし喋ることも問題ない。

インストールされた知識がなきゃ詰んでたよ。気持ち悪いとか思って申し訳ない。礼は言わないぞ!


「ここかなぁ?」


武装した野郎が入っていった建物を観察する。3階建ての民家風だ。勿論普通の民家よりデカイし看板に【アルバート亭】とか書かれてる。

ここは普通に文字で書かれてるんだと確認し覚悟を決めて入って見た。


室内にはすぐにレジがあり若い女性が受付をしていた。20台前半で藍色の髪をした愛嬌のあるショートカットの美人さんだ。


「いらっしゃいませ、お食事ですか?」


「あーと、宿泊できるかな?あと金額きいていいか?」


受付さんは驚いた顔をしていた。まぁガキが宿に1人泊まるなんて事態そうないに違いない。


「宿泊ですね?一泊銀貨2枚になります。御1人様でよろしかったでしょうか?」


「はい、あの妖精も一緒なんですが大丈夫ですか?」


「勿論です、追加料金も必要はありませんよ」


にっこりとこちらに笑顔を向け丁寧に答えてくれる。ここは当たりと思い銀貨2枚を取り出し受付さんへ渡した。


「はい、確かに受け取りました。こちらが鍵になります。チェックアウト時には当受付に鍵を渡して頂ければ結構です。

食事は別料金としてこちらでも食堂をご用意させていただいておりますので是非ご利用くださいね」


「ありがとうございます、では」


会釈をして部屋に向かう。あのニコニコ顔は厄介だ。微妙に居心地悪いさっさと部屋に撤退した。






部屋は6畳程度のシンプルなものだベットと机と椅子のみ。トイレは各部屋ついてるのは助かった。


「こんな1日長かったっけ…?」


『お疲れ様です、なんかボロボロですねぇ』


「色々あったのは知ってるだろう?体力的には余裕はあるけど、精神的にもうだめだ」


既に【クリーン】と【ドレスアップ】で身体もキレイにし白ジャージに着替えてベットに寝転がっている。


アーシャも俺の頭の横で寝転がりながら羽をパタパタさせていた。


意外と寝心地がよく日の匂いに包まれながら明日のことを考える。


「金の価値が分からんけどもう銀貨は1枚しかねぇよ、いっそ明日は壁の外で結界はってプレハブで寝ようかな。設備的にもいいし」


『ご飯的な問題はありますよ?ワイバーンの肉とレーション生活ですか?』


「イヤ過ぎる…やっぱ金を稼ぐ必要があるね。住む場所はどうにでもなるけど食料と調味料は最悪なんとかしなきゃ」


『では金策ですねー、サポートがんばりますよ』


もう動く気力はなく今晩はレーションと水で誤魔化しすぐに寝てしまった。

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