「ハンタァー、ハンタァーが、また休載した……」

兄:

「――誰か教えてくれ。連載再会まで、今度は何年待てばいいのだ……?」


私:

「良いところで終わってしまいましたよね。豪華客船での、念能力による密室殺人事件とか、ミステリィとしても異質の完成度じゃないですかね」


兄:

「そうなんだよー。トガッシー先生のマンガの面白さってさ、個性的なキャラクターによる必殺技の応酬もそうなんだけど、全体的なストーリーテリングに、謎解き要素と言うか、駆け引きというか、ミステリィ小説にある様な、特有の空気感、ハラハラする緊張感を保たせるのが、実に巧みで上手いんだよ。正直、天才だと思う」


私:

「語りますわね、お兄様」


兄:

「だって好きなんだもんー。原作はさー、俺が小学生の頃から連載してるはずなんだけど、はたして俺が会長のようなジーサンになった時、連載は無事に終わっているのか、それともまだ続いているのか……気になるわー」


私:

「そうですね。私も小学生の頃、お兄様から旧式のパソコンの払い下げを頂いたので、おこづかいで電子書籍を購入して、いろいろなマンガを一日中読み耽っていたのを思いだしますね」


兄:

「……今思えば、ちょっと後悔してるけどな」


私:

「なにか?」


兄:

「なにも。ところでさ、おまえがハンタァを読みはじめた時って、原作どの辺りまで進んでたっけ? ちなみに俺は第一話から、本誌でリアルタイムに付き合ってきたわけだがな? 友人の散髪屋さんの待ち相席で、ジャンプーを読むときは、まっさきにハンタァを読むぐらい、先見の明があったと言えるかな?」


私:

「なんで得意げなんですか。けど、そうですね、私が電子書籍で読み始めた時は、ちょうどキマイラ蟻の話が始まったばかりだった様な……」


兄:

「は? キマイラ蟻編? めっちゃ最近じゃん!」


私:

「いえ、もうだいぶ前の話でしょう。順番的には新しい方ですけど」


兄:

「……」


私:

「お兄様?」


兄:

「わかった。もういい。貴様と話せることは、もはやない」


私:

「えっ」


兄;

「二度と言わすな。いいか、俺とハンタァハンタァを語りたければ、十年……いや、最低で十五年を待て。連載と休載の狭間で苛まされる苦節を最低十五年、その境地に至ってようやく、この俺と同じ土俵に立てたとみなし、話を聞いてやる」


私:

「どうして作品を語り合うのに、お兄様の許可がいるんですか。というか、一体なにがそんなに気に食わなかったんですか……」


兄:

「久しぶりにきれちまったよ……若さってやつは、これだから困るぜ……」


私:

「お兄様を見ていると、難しいことを考えなくていいから、楽ですわ」

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