「小学生男子の将来の夢がゴールキーパーな奴は、男子力が高い」
私:
「――はい?」
兄:
「だから小学生男子の将来の夢が、サッカーのゴールキーパー、な奴は、将来的な経済力、すなわち〝男子力〟が高いからキープしておくべきと言っているのだ」
私:
「深夜に、とつぜん意味不明な発言をされると心配になるので、やめてください」
兄:
「サッカーというのはだな、チームプレーにおける競技の中でも、個人技が非常に目立つスポーツだと言える」
私:
「その解説、聞き流すわけにはいきませんか?」
兄:
「アレは俺が、まだ小学生の頃だった……」
私:
「無視ですか、お兄様」
兄:
「小学生の野良サッカー小僧というのは、概ねフォワードになりたがる生き物だ。俺も例外なくそうだった。そしてキーパーになりたがる小学生は少ない。走り回れないし、退屈だし、なによりイメージが地味だ」
私:
「……地味、なんですかね。指揮官的な、もっとも大事なポジションだと思いますが」
兄:
「それが分かるのが大人なのだよ。フォワードを攻めの火属性、ミッドフィルダーを柔軟な風属性、ディフェンダーを癒しの水属性とみなせば、キーパーは鉄壁守護の土だ。シンプルに、俺ツエーを表現する位置から、もっとも遠いところに存在する」
私:
「……まぁ、ゴールを直接狙えるフォワードに華があるのは、分かりますが」
兄;
「その通りだ。故に昔のマンガでは、キーパーにキャラクター性を持たせる際に、いろいろと工夫している様が見られるのだ」
私:
「主人公の友達や、ライバルキャラとして登場させるわけですか?」
兄:
「王道だな。その他には、本人が直接相手のゴールまでボールを運んだり、」
私:
「守備は?」
兄:
「無視だ。その他、キーパーが修行する回想シーンでは、崖の上から、コーチに巨石を落とされて、それを素手で叩き割る。という様なことを行っている」
私:
「格闘家になった方がよろしいのではないでしょうか」
兄:
「昔の少年には、そういう火属性的な描写の方が分かりやすかったのだ。話を戻すがそういうわけだから、普通は、小学生の男子はあまりキーパーになりたがらない。だが当時の同級生に一人いたのだ。自ずからキーパーを志願する少年が……」
私:
「さすがですわ、お兄様」
兄:
「俺ではない。言ったろ。俺だってフォワードやりたかったんだよ。友達と二人で一つのボールを同時に蹴ったら、威力が2倍になると信じて疑わず、1,2,3、と掛け声を合わせて、陽がくれるまで練習してたぐらいだぞ」
私:
「無駄な努力、お疲れさまでした」
兄:
「おまえ、本当に腹が立つな。……まぁいい。キーパーに話を戻すがな、ともかく、中学生や高校生にあがると、本格的にスポーツ選手を目指したり、メンバーの上下関係の都合だったり、他にも個人的な価値観だとかが合わさって、思考に柔軟性が生まれる。ゴールキーパーという役職に就くのも悪くないな、と思えるようになる」
私:
「つまり、小学生の頃から、ゴールキーパーになりたいような人間は、その時点で柔軟性があるとおっしゃりたいのですか?」
兄:
「そういうことだ。短パン小学生どもが、好き勝手にぐーぱーで分かれて、キーパーはよ。誰かはよ。という雰囲気になった時に、颯爽と『じゃあ、オレ、キーパーやるわ』こう言えるやつは、本当にえらい。今でいう空気が読める系男子だよ」
私:
「その男子が、キーパーマニアだった可能性は?」
兄:
「俺もそう思って当時、聞いた。しかしな、そいつは笑顔でこう言った」
小学生男子:
「――オレが、キーパーを引き受けることで、みんなが、楽しく遊べるからさ」
私:
「お兄様、その話、さすがに盛ってません?」
兄:
「失礼な。俺の友達と、俺の記憶を疑うのか。この前の同窓会で聞いたのに」
私:
「信用なりませんわね。で、どうしてサッカーの話なんですか?」
兄:
「――イナ○レの新作が、でる……(大ファン)」
私:
「え、そうなんですか? またサッカーで宇宙を救うおつもりですか?」
兄:
「あ~、楽しみだよな~。新作は原点回帰がテーマらしいからさ。初代主人公がキーパーだったし、また熱血系のキーパー出てくるんじゃないかってさぁ~」
私:
「そこに話が繋がるんですね……」
兄:
「うむ! あ~、本当にイナ○レ新作楽しみなんじゃ~! ファイアトルネード! イナズマブレイク! ゴッドハンドエーックス!! パラディイインストラァイク!!! うわー、うわー、今から必殺技叫ぶ練習しとかんと!!(大はしゃぎ)」
私:
「お兄様」
兄:
「なんだよ! ホーリーサンクチュアリッ!!」
私:
「ただ、必殺技を叫びたいだけなのでは、ないのですか?」
兄:
「……」
私:
「……」
兄:
「みくびるなよ。俺がサッカーを好きな理由を改めて解説――」
私:
「黙れ。私の時間を返せ」
兄:
「ヘブンズタイム!」
私:
「」
――ごっ。(通常)
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