「男はいくつになっても、未知なる力に憧れるものさ」
私:
「お兄様、今夜の〝野菜炒めモドキ〟に物申したいのですが」
兄:
「はい」
私:
「バラとセージの香水でも振りかけたのですか?」
兄:
「んーん?」
私:
「ではいったい、なにをどう調理したら、豚肉、キャベツ、ニンジン、タマネギのすべてから、この様に食欲を失わせるような芳醇な香りが発せられるのです?」
兄:
「束の間の平和。日々繰り返される、安穏たる人生の調和にちょっとばかし辟易してしまってな」
私:
「誤魔化すのはやめてください」
兄:
「なぁに、いろいろ調味料を節操なく振りかけて、弱火で焼いたあとに煮込んでみたり、やっぱり強火で焼き直してみたりと、新たな境地を開拓できやしないかなぁと確かめてみた結果が……うーむ、香りは確かにヤバイな」
私:
「お兄様、食材で遊ばないでくださいとアレほど! 私の晩御飯がひどい有様になるからやめてくださいと何度言えばわかるのですかっ!?」
兄:
「いやぁ、前は無事に覚醒できたのになぁ。貴様も美味そうに食ってたし……」
私:
「だ・か・ら! なんでたまに無駄に凝った創作料理に走ろうとするのかを聞いているんですよ! メシマズ嫁の真似事は美少女が行うから意味があるのであり、お兄様がやったところで世間の非難を味わうだけだというのが、何故その歳になってもお分りにならないのですか!?」
兄:
「ワシまだ若いもん。挑戦したって、いいじゃない」
私:
「やめてください。やめて。やめろ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます