エピローグ
夏休み初日。
俺は通学用のカバンに教科書類を詰め込むと、羽のように軽い足取りで玄関へと向かった。
途中リビングでテレビを見ながら寛いでいたルリリに見つかり、
「あっれぇ。にいちん、お出かけ? 夏休みなのに珍しいねー」
と声をかけられる。
「ああ。ちょっと図書館にな」
「図書館? あー、彼女さんと一緒に宿題やるんだー?」
「まあな」
「いっつもギリギリまで宿題やらないにいちんが、変わるもんだねー。彼女さんに感謝しないとね」
「そうだな。じゃあ行ってくる。帰りにプリン買ってくるから楽しみにしとけ!」
「おっけー。気をつけてねー」
陽気な声に見送られ、蒸し暑い外へと踊り出す。
生まれて初めての彼女と過ごす、最高に熱い夏休み。
念願の甘い夏休み。
少し歩くと、
「よう相棒」
向かい側から海堂がやってきた。
「おう。残念だが海堂。俺はこれからデートなのだ。お前とは遊べない」
「はっは、心配するな。今日はルリリちゃんに会いに来た」
「なにっ」
「新作のゲームを一緒にやる約束をしていてな」
にやっと笑い、ゲームのパッケージを見せてくれる。
落ちものパズルだ。俺はあまりやらないタイプのやつである。
「いつ間にそんな約束を。まああいつもゲーム好きだしな。ごゆっくり」
「おう。相棒もな」
俺は海堂と別れ、図書館に向かう。
これからの日々を想うと、ニヤニヤが止まらない。
「よーし、夏を楽しむぞーっ!」
俺は心の底から幸せを実感し、空高く拳を突き出した。
黒猫と幸せ平行ライン 星崎梓 @hosiazuazu
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