Drei
ほんとうのかみさま
七人の子供が押し込められた部屋の中心で、少女はただ一点をじっと見据えていた。
まだ幼い少女とは思えない落ち着きぶりに、彼は明らかに動揺していた。それでもこの子供達の前で無様な姿を晒すわけにはいかない。どこまでも冷静に、どこまでも優位性を見せつけなければならないのだ。そうしなければ、頭の良いこの子供達は今とは一転して彼らに噛み付くのだろう。それは彼にとってひどく恐ろしい事態であった。
そんな彼の心を見透かしつつ、それでも関係ないとばかりに彼を見据えていた少女は微笑んだ。──全てを知っている、だけど安心して、私は決して貴方に危害を加えない……実際に声として発音された訳でもないのに、彼の頭の中でそのような文章が浮かぶ。汗が流れた。ここで汗を拭うのは不自然だろうか、それとも。
他の少年と少女は思い思いに遊んでいる。
ただ、一番真ん中にいる、そしてこの中で最も歳下である少女だけが不思議な色をした瞳で彼を見ているだけだった。どうして遊ばない。どうして他の子供達は彼女に関心を払わない。いや、払っていないわけではない。いつもはあんなにも楽しそうではないか。
膠着状態が続いた。目を逸らせば狩られる、そういった弱い獣の心境を体験しているようだ。汗ばむ手や額は隠しようがない。高鳴る心臓は今にも張り裂けそうだ。この部屋へ安易に足を踏み入れたのは失敗だった。首謀者である彼は定期的にこの部屋へ訪れるが、普段なら誰か護衛を付けてここまで来る。今日に限って、誰も連れてこなかった。簡単な気持ちでこの部屋へ訪れるのを狙っていたかのように、少女は部屋の中心に立ち、純白の服装、長い金色の髪、蒼い瞳、全てを彼の記憶に刻み込むべく微笑みながら待っていたのだ。あまりの美しさに声を失い、あまりの衝撃に彼は身体が震えた。
馬鹿な、どうして私がこんな子供達に──
……いや、それが私の望みではないか?
「ねぇ」
少女は小さく声を出した。声もまたこの世のものとは思えないほど美しい。けど、どうして手が震えているのだろう。
彼女こそ彼が望んだ存在かもしれないのだ。
「世界はいつ救われるの?」
彼は真実と共に自分の震えの正体に気付く。あってはならない、しかし真実がそうならば、その感情は実に良く納得がいった。
それは恐怖という感情だった。
──……その時の恐怖は、こうして度々夢の中へ訪れるのだ。
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