市役所に勤務する「私」が通告されたのは『怪し課』なる部署への異動。妖怪返送担当の課というその部署で出会ったのは、これまた怪しげな「先輩」。つねに青ジャージに身を包み、さばさばした調子でカップ麺をすする彼女は妖怪を送り返す仕事しているというのですが……。
「先輩」と「私」の二人だけの『怪し課』。しかしこの部署、真面目に仕事に取り組んでいる気配もなければ、なかなか妖怪らしい妖怪が派手に活躍することもない……でありながら、確かに「お仕事もの」で「妖怪もの」なのです。
日常に溶け込んだ妖怪のほのぼのとした雰囲気や、それぞれの季節特有の空気感。淡々とした情景描写のなかで、今も昔も変わらずそこに〝ある〟妖怪たちの息遣いが聞こえてくるかのよう。
そして、広島弁を操る「先輩」のテキトウでだらだらとした性格、それに渋々従う後輩の「私」。この二人の関係性がなんとも言えずまたいい感じなのです。
登場する妖怪はすべてオリジナルでありながら、いかにも〝ありそう〟な造形が絶妙。それを説明する先輩の韜晦っぷりも見どころです。
ラストの読後感も柔らかく、素晴らしい。
おススメです!