8 パフ

 太陽がいなくなって日向は泣いた


  けれども悲しみはそう長く続かなかった


 ほかに何人もの恋人がいて、日向は一番新しく短い関係だったらしい


しばらくの間の好奇心からの噂、悲しみのあと皆もとに戻った


 その間に咲の進学が決まりそれから咲は変わり始めた


 ジョギングで鍛えられ 旺盛な食欲を見せいつもおどおどとおとなしかった


咲はもうどこにもいなかった


 髪はひっつめで化粧もなく相変わらず無口だったが精気と生命力にあふれ


 美しい顔とスタイルは人目を引いたが、それはどこか挑んでいるような


 威圧的な感じがあった


 ともあれ だれの目と心に至福を与えたが相変わらず叔父さんの家に行く以外


 恋人は作らなかった


 ある日咲が突然言った「おねいさんも叔父さんのところに行ってみない」


 「なんで 急に」日向は言った


 「叔父さんもう長くないみたいなの」


 咲が言うと 「そう」と目を伏せた


  「それにねツタは刈り取れないけど 中には使ってない部屋がいくつもあっ


たでしょう 私は部屋を作ったわ 綺麗にしてるし猫がいるの」


 「猫」 姉は顔をあげた


 子供のころから姉は動物が好きだ でも両親は買うのを許さなかった


 「迷い混んできた猫なの でも蚤取りの薬もつけてるし綺麗で可愛いわよ」


 「そうね 行ってみようかしら叔父さんは病院に行かなくて平気なの」


  「本人がいいっていうの」


 「そう やっぱり様子を見にいかないとと駄目よね」


 咲は立ち上がった ジョギングに行くために・・・・・


  速く 速く もっと速く 


 空には平たい雲が流れていた もっともっと あの雲よりもっと


 薄白いミルクのような月


  叔父さんの家にはあっという間についた

奥に行くと パフがしばらくこちらをうかがってから寄ってきた


 パフの話の出だしは決まっている


   (僕は猫だから本能が強い


 だから今日の咲は安全だってわかる)


 消耗したルビたちはおとなしい みんなパフを怖がっている


  パフは透き通ったガラスのような目で咲を見上げた


 「いまごはんをあげる」


 パフは一気に食べると満足そうに顔を洗い出した


 (猫には縄張りが大切で 咲が変わってしまったら困る)


 「大丈夫 代わりの人を連れてくるわ」


 パフはしばらく考えるような様子をしながら近寄ってきた

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