9 叔父さんの記憶

止まっていた時間が急に進み目覚めたような気がする


 今まで自分は何をしていたのだろう


   膝にかかっている毛布をどけると椅子に足が縛り付けられている


人間が持っている本能的な避難対策に押されて自分でやったものだ


 思い出せる意識がここ何年のなかったくらいはっきりとしている


 足には大きな傷がありいつもうずいて不愉快だったはずだ それがない


もしかして許されたのかと思うと突然喜びと笑いがこみ上げてきた


 私はここにいる もう誰も傷つけない しっかりとした理性を取り戻した、自分自身を取り戻した


  ちょっと待て冷静にならねば 瞼を閉じて考える記憶が霧雨の様に降り注


ぐ 私は罪人だ だがあの島は遠い、それに十分苦しんだ


 そんなことが頭の中を堂々巡りになっている時、戸口にたたずんでいる姿に気づいた


咲が涙ぐんで立っていた 「叔父さん立てるの」咲が聞いた


 その声で自分が中腰になっていたことに気づいた


 その後ろから猫の声がした

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