第13話 めちゃくちゃタイフーン


大嵐が ボクらの玻璃の森にやって来た

何もかも吹き飛ばしちゃうレベルのやつだ


ボクはコリス

一番上の髭の兄さん ルリユール3世は今

フウチの本を仕上げるべく、奥の部屋に籠っている

こうなると、外が嵐とか そんなことはまったくわからなくなるんだ

だからボクが! この工房を守らなくちゃならない


木の板を持って来て、窓に打ち付けてみようとするけど

どう考えても、ボクの方が飛ばされちゃう

板の上で空中サーフィン ヒューヒュー

バランス取ってどこまでも行けちゃいそう

一カ所に留まることを知らない、アウトローな俺?


なんてちっちゃな脳内で突飛なことを考えて ぼんやりしている間に

更に外を吹き荒れる風の強さが増して来た ヤヴァイな


お隣の仕立て屋さん

ジェームズテーラーさんとこの看板が、今にも外れそう

窓越しに合図をしてみるけど

お針子さんは優雅にクロスステッチなんかしてる

おーい おーい こっちみてー


あ、気づいた いやいや

にっこり笑顔を返して手を振ってもらってもぉー

手旗信号を習っておけばよかった

いや、相手が読み取れなければ同じか


そうこうしているうちに、看板はピューっと彼方へ

ああ、誰かにぶつからないといいな 後で見つかるといいね



これじゃあ、くまさんとこのバームクーヘン工場も大変だろうなぁ

今日はもう焼くの中止かな たまごトリに行けないだろう


吹き上げる風 ぎりぎりの注文

吹き荒れる欠品 タイフーン

めちゃくちゃな俳句でも読みたくなる


そうそう、「玻璃の音*書房」のクウヘンさんの名前は

今更ながら言うけど、バウムクーヘンから来ている

え、そんなことはみんな知ってるって?

そっかー なぁーんだ


切り株の形のお菓子ってすてきだ

あの年輪1輪だけをはがしてたべたくなってしまう

ふぅー、あの匂い思い出しただけで お腹ぐうぐう


あ、そうそう 思い出した

玻璃音コーヒーをボトルに入れてもらってきたんだ

ハバーブレイク ハバーキッ……。(商品名)



一晩であっという間の台風が去って

ドアを開けたら、何もかもがなくなった感じ

木の実も草木の果実も きれいさっぱりなくなっちゃって悲しい


しばらくボクは、ここの後片付けを手伝わなくちゃ

「こりす書房」は休業だなぁ 玻璃の音*書房にも遊びに行けないな


おっきな袋を持って危ないものを拾って、もう動けないくらいに働いた

ああー


そんな時、裏庭にもこもこと煙がたなびくのが見えた

ぽっかりと大きな水たまりがあるんだけど、沸いているみたい

まるで白濁のにごり湯 

いや、森の何もかもを吹き飛ばした、剥奪の湯か


どうやら工房の裏に、温泉が湧いちゃったらしいyo!




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