第8話 うさぎが来た寝待月
季節は飛んで、突然の夏
今宵は、「寝待月」というらしい
月が出るのが遅くて、寝て待つほど ということなんだって
ねまちづきと ねまきずきは なんだか似ているということで
今夜はパジャマ姿で、コリスと 月を待っている
夏の宵なのに、少しひんやりした空気が ここちよくて
耳をすませば、秋の虫たちが準備してる かさこそした声が聴こえてくる
ぼくらが飲んでいるのは カルピス
水玉模様の あまくて とろける のみもので乾杯
カフェオレボウルに入れてみて とろっとした水面に 君が映るのを待つ
縁側に ちいさなお盆をおいて、月に捧げるゆらゆら
*
今日の晩ごはんのカレーを 手伝って
ぼくとコリスがむいた にんじんの長い皮
色がきれいで もったいなくって、庭の物干しにぶら下げてみた
今、ふと見たらね、うさぎが ぴょんぴょん 飛びついてるんだ
え、月から やってきちゃったのかな
にんじんの いんりょくは、はんぱじゃねーぜ って 言ってる
なんか 変なうさぎが釣れたね、コリス
コリスが 変うさぎのそばに行って、一緒に飲まないかと誘ってる
お、なんだよ、おこさまか きみたちは
どうやら 成人しているらしい 変うさぎは
月を見るなら、げっけいかんって 言って、持ってた瓶を出してきた
干しておいた にんじんの皮を肴に 一杯やりだしちゃったよ
ほんとに 月からやってきていたら、ちゃんとこの子は
還れるのだろうかと いらぬ心配をしてしまう 不思議な夜
お月さまが見つけたなら、そっと手をさしのべてきて
きっと そのあたたかい光る手のひらに乗せられて
君は 無事に 月に還るのだろうね
ちょっと 眠くなってきた そろそろ 姿を現す頃かな
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