第7話 ある午后のティーパーティ


コリスは、虫が苦手だ

どんぐりの中から虫さんが出てきちゃうたびに 気絶


つい最近も、ドアの前で なめくじさんが横切っていて

玻璃の音*書房に入れなかった


でも、コリスはやさしい子なので、虫がきらいって悟られないように

そっとレディファーストぶって(実際なめくじさんは女の子だった)

ゆっくり横断する彼女に 道をゆずって待っている 紳士の振りをしていた


コリスが 虫が苦手なのを公表しない理由は もうひとつあって

近くの小学生男子に 嫌がらせで虫をくっつけられたりしないように

だから、ほんとはしっぽの毛が めちゃくちゃ逆立っちゃっても

平静をよそおって、がんばってるんだよね


ところが、そんな心配をよそに

あるきっかけで、コリスはちょこっと なめくじさんがすきになった


ある日、なめくじさんが なんとバイクで遊びに来たんだよ

キキーというブレーキ音とともに、親指をくいっと立てたんだ(親指ドコ)

そして、そのヘルメット姿に ぽっと見とれちゃったんだね、コリス

サイドに☆がいっぱい描かれてるヘルメット 夢見ごこちの星



月に一度 不定期に お天気のいい午后、 小動物たちが集まって

玻璃の音*書房の芝生の庭で開かれる ティーパーティ

みんなどこかのお家の居候のブンザイ 集まるのを心待ちにしてる


たべものやのみものは もちよりで、柚子さんからもお裾分けがあるよ

今日はデザートに フルーチポンチやババロアが用意されてる


森の奥のぼくの中学で理科を教えてる クロード葉月先生のとこには

カマキリくんがいて、今日もはりきってるよ


先生の昨日の授業は、浸透圧がテーマ

「なぜ 、なめくじは塩をかけると消えるのか」の説明だった

なめくじちゃんは こっそり窓辺にいて、授業を聴講していたらしいよ


カマキリくんは、先生の自転車のハンドルにくっついた卵から孵化した子で

ずっと守ってもらった恩義を感じて(カマキリは忠義を尽くす昆虫なのだ)

番犬ならぬ 番かまきりのつもりで 鎌をふりかざして、いつも玄関先にいる


そして、葉月先生は料理が得意なので、動物たちの人気者

今日も カマキリくん持参の料理は みんなのハートをつかむんだ

夏野菜のカレー、お魚の煮つけ、茄子とシシトウの煮びたし、おいしそう



お隣の砂糖さん家の居候は かわいい姉妹

イタチちゃんは、みんなのあこがれの女の子 愛くるしいお目目でウィンク

お姉ちゃんの真っ白なオコジョちゃんは、きょときょと辺りを見回してる


そんな姉妹に惚れこんでるのは、これまた兄弟の アオダイショとシマヘビィ

そっくりの双子の兄弟の見分け方は 瞳の色だよ

アオちゃんは黒目、シマちゃんは赤目


コリスは、とにかくこの2匹が苦手で 身がすくんじゃうんだけど

今日はなぜか 赤と白のしましまのしっぽカバーを着てるせいか

姉妹に ていねいにお茶を注いであげてる姿が ほほえましく見える




最後のお片づけは、みんなでするんだけど

かぶとむしのジョシちゃんは、もう眠くてぽてっと転がっちゃう

そんな時、 彼氏のかぶとむしのジョージは がんばって働いちゃうんだ


カップを重ねて 一生懸命キッチンに運ぶ姿を見て

またコリスの昆虫ぎらいが 一つ空に消えて行った


そんな まったりした 午后のティーパーティ








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る