幕間2

インターミッション2

メリーと並んでファイルを読んでいたら、僕は知らず知らずのうちにため息をついていた。


「……どうしたの?」

「いやぁ、この怪異と対峙した時……僕いいとこなしだったなぁ、なんて」


 振り返ってみれば、一人で探索し、遭遇。だが、ホイホイ餌食になりそうになって、そこをメリーが救出。

 一緒に逃げたら罠があり、それに気づかぬまま飛び込みかけ。それをメリーが看破して。間一髪。

 あまつさえ、当の腕無し少女を追い払ったのもメリーの手腕。これをいいとこなしと言わずしてなんと言うのか。

 僕がそんなことを言うと、メリーはクスクス笑いながら、僕の手の甲をちょんとつついた。


「何言ってるの? 貴方が動き回って色んなのに干渉してくれたから、私は冷静に分析できたのよ」

「……毒味役みたいだ」

「切り込み隊長って言いましょうよ」

「二人だけどね」


 軽いジョークを交えた後、僕は首の骨を鳴らしつつ、時計を確認する。大分話し込んでいたらしい。そろそろいい時間だ。夕食にした方がいいだろうか。そんな事を思っていたら、ふと何の気なしにつけていた、テレビの特集が切り替わった。

 取り上げられているのは、有名なテーマパークのアニバーサリーだった。

 チラリと横目でメリーを観察する。心なしか、目が輝いているように見えた。しっかり見ないと分からないレベルで。


「……次の休日にでも行こうか?」

「あら、デートのお誘い?」

「そうだね。どっかの誰かさんみたいに僕は遊びに行く為に回りくどい事は……」


 言い切る前にベッドバットが飛んできた。顎を正確に狙ったそれは、僕の脳を揺らし、床にのたうち回らせるには充分すぎる威力を持っている。


「顎はダメだよ」

「乙女に恥をかかせた罰よ」

「ああ、成る程、そりゃ重罪だ。そんな奴は酷い目に遭えばいい。顎なんて安いね」

「……まぁ、辰はわりと酷い目にあってる気もするけどね」


 主に怪異で。と付け足すメリーに、それは君もだろうとは言いはしない。そんなの今さらで、そんな時折来る非日常が、僕らの日常なのだ。


「……あれは、ハロウィンだったね」

「そうね。ある意味で酷い悪戯だったわ」


 そう言って目を細め、テレビに映るテーマパークを見つめるメリー。それに習い、僕も視線をテレビへ戻す。


 回想するのは、とある秋の収穫祭。

 夢の国にて、僕らの命を懸けた奇妙なデスゲームに興じる事になってしまった。そんなエピソード。

 アトラクション風に題するならば、それは……。

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