幕間
インターミッション
「辰? 何見てるの?」
「ん~、活動記録だよ。以前遭遇したあれやこれのね」
休日の昼下がり。僕が何の気なしに開いたそれは、何の変鉄もない大学ノート。
それには、僕とメリーが関わった様々な案件が、僕の主観やらを交えて簡単に記録されている。
例えば、悪魔召喚の片棒を担がされたエピソードだったり。
富士樹海で出会った、女郎蜘蛛とその旦那さんとの交流だとか。
某ネズミの王国。その裏側で起きた、デスゲームのレポートもある。
とある山奥のペンションにて巻き込まれたUMA事件に、メリーの未来予知体験記。エイリアンとのニアミスもあれば、まさかの幽霊側からきた、成仏させてくれ。何て依頼まである。
こうしてみると、幽霊に妖怪、都市伝説に超常現象など、あらゆるものを満遍なく網羅しつつあるなぁとは思う。
「……懐かしいってほど、昔でもないのよね」
「そうだね。遭遇しすぎてるって感じは否めないけど……まぁ、それを言ってもしかたがないね」
身体の相性が良すぎるのが一番大きいと思う。
もちろん、霊的な意味での。
事実、メリーと一緒にサークルを結成してから、僕はそういった類いのものとの遭遇率は、昔に比べて格段に上がっている。聞くとこによれば、メリーもだとか。
「ファイル、私も見たいわ」
「ん? いいよ」
どうぞ。と、僕は背後にて、我が物顔でベッドに寝転ぶ相棒へ、ノートを手渡す。
一応今いるのは僕の部屋だけれど、今更だろう。
こうしてお互いの部屋を行き来したのは、一回や二回ではない。
二人とも大学生で、一人暮らし。色々な意味で自由なのだ。
「……ああ、これもまた、ヒヤヒヤする事件だったわね」
ノートを受け取ったメリーは、適当に開いた項目に目を細める。
懐かしむような、慈しむような表情だった。
「ヒヤヒヤしたのが多過ぎて絞れないな。いつの?」
「結構、最初の方よ。手繋ぎのおまじない。その切っ掛けよ」
……あれか。
僕の脳裏に、いつかの情景が目に浮かぶ。
忘れもしない、大学一年春の出来事。
それは、この世に存在し得ない駅で視た、とある怪異との刹那の邂逅だった……。
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