「復活の乙女」その6
ところで王子、とリッキー。
「この荷物は全部わたくしが持つのですか」
王子は今はあえて彼女をリックと呼ぶ。なんだか二人だけの特別な気がするからと。
「一度、草原の丘あたりをなにも持たずに転がりまくってみたかった!」
「わたくしと再び見る景色はどうなったのです」
「君も来い!」
「何を仰っておられるのですかー! 王子!」
リッキーはいつになく幸せだった。
笑って欲しいひとがいる。永遠に失われることのないこの一瞬。
今は、こんな自分を引き寄せて、抱きしめてくれる存在があることをアレキサンドラは素直にうれしいことだと思えた。
『君に、私の親友になってほしくてな!』
王子はそういったはずだ。
王子が尽きだした紙には誓約書とあった。
断じて結婚を誓う書面ではなかったはずだ。
彼女は真っ向から全力で受けあった。
『一生王子の花乙女として傍らにおります』
と……
王子は王にそれを突きつけて、正式にリッキーを自分のものにしてしまった。
リッキーがそれに気づいたときには、花嫁衣装がすでに用意されてしまっていた。
かつては王妃も身につけたものだという。
そんなものはリリアから見たら時代遅れ、のはずだったが、リリアも客もなにも言わない。
なにかゆかりのあるものなのだろうか?
リッキーは頭痛がするのを感じとった。
第一部完
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