まだ「不吉の星」

 男は、頬をぼりぼりとひっかいて、妙な顔つきをした。


「お、おう……気にすんなよ。今後関わり合いたくないなら、ようはよ、断っちまえばいいんだ」


「断る? なにをだ?」


「花なんざ送ってくることをさ」


 花や嗜好品の意図は知らないが、知らない差出人の名前はチェックして、もらったものは突き返すことにする。


 これは後々の彼女のためになった。


 多くの華燭の中で、たった一輪、何も書かない黄色のヒナゲシが混じっており、高価な花々の中では軽く浮き立っていた。


     ×   ×   ×


 リッキーは街で一番丈夫な芦毛を店で借りると、森の中へと入っていった。


(ヒナゲシの咲いてるところを熟知しているのは、あの男くらいだ)


 果たして、大岩の上に膝を抱えて黄昏てる彼がいた。


「ルイ」


「……よかった」


 ルイは大岩を降りてきた。


 彼が働くようになってからというもの、会うのは久々だ。


 彼はリッキーが貸馬を木に繋ぐのを見ていた。


「おぼえていたんだな。……おまえが変わっちまったのかと、心配していた。……その後、どうなんだ?」


「なにもない。今日は勝手に足がむいただけだ。その後ってなんだ? どうって?」


「てっきりもう、すっかり忘れられたかと思った」


「そんなことあるもんか」


 以前なら、飛びかかっていくところだが、最近そういったスキンシップもうざったい。

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