まだまだ「花乙女」

 花乙女たちは、一年の間王宮に勤めて、いわゆる花嫁修行をする。


 もしくは、秘書官もする。


 禁じられていることはいくつか。


 特に男性との距離が近すぎてはいけない。


 花乙女はアドラシオーの文化となり、その有用性を示すように、隣国への親善大使となったり、後宮の警護にあたったり、側室になったりする。


 そこまでできた娘でなければ、王室とは関わりなく暮らしていく。





「リッキー、眩しいわ」


 今まで一番交流のあった、リリーがため息をつく。


「もう、私たちより先に花乙女になるのね。羨ましいわ」


 自然、リッキーの髪をくしとくマリアの手に、余計な力がこもる。


「ああ、もしわたしが花乙女になったら……まっさきに王子サフィールさまの求愛を受け、王様には贈り物をもらって、一年の間、戯れるのよ」


 それじゃいつもとおんなじじゃない、というその場にいた全員の非難はマリアの耳に届かない。


 それにしても、と衣装タンスのある小部屋に、なんやかやと理由をつけて集まってきてしまった少女たちが、目を見張っている。


「あんなに男の子とばっかり遊んでいたのに、この見事なハニーブロンドのウェービーヘア!」


「やーん、さらさらしてる! 幼い頃はあんなにくちゃくちゃしてたのに!」


「櫛通りもスムーズのようね」


「あたしにも触らせて!」


 ビアンカが泣きそうな顔で近づいてくる。

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