プロローグ終わり


 ルイはその様子にひゅっと息を止めた。


「おまえの親父さん、まだ……」


 そう言って、心配そうにリッキーを見る。


「いいんだ。ルイ。父には父なりの人生がある。生きてくれればいいさ」


 ああ、それだから目が離せない。


 ルイはじっとじっと、黙ってから聞く。


 いいのかよ、と。


「いいのかよ、リッキー? お袋さんは……?」


「母はボクがお嫌いなのだ。ボクが醜いから」


 もう何度も繰り返された問答に、ルイは肩をおとし、涙ぐんでいう。


「おまえ、絶対にそんなことねえよ!」


「ありがとう、やっぱり優しいね、ルイ。いいんだ。さあ、帰ろう」


    ×   ×   ×


 城下にさしかかった頃、ふたりの目には、眩いばかりの意匠を凝らした身なりの子供が映った。


「金持ちかな。絶対そうだな」


「少女人形のようだね。ちょっとかわいい」


「色が白いな。オレ達とは違うな。名前なんていうんだろ」


「前にも見かけたけど、誰も知らないんだ。親しい子もいないみたい」


「どこの王子様だよ」


「しっ! 王族の噂は厳禁だ」


 リッキーが言うので、ルイは急いで口を閉じて、肉付きの薄い少女の後ろ姿を追いかけた。

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