まだまだプロローグ

 全身、脱力しながらルイは言った。


「うああっとと。さすが……さすがリッキーだよ! でもオレを踏まないで……」


 軽やかに身を反転させる、華奢な少女。


「いやー。あんなに高いところに巣があるなんて、とっても想像つかなかった。あんなに小さなヒナを、よく見つけたね、ルイ。……踏んじゃってごめんね」


 ルイと呼ばれた少年は、赤くなって、しきりに頭をかいた。


「いやー、いやいやいや。鳥のヒナってさー、人が触ると死んじゃうだろ? 近くに蛇がいたし、おまえがいてくれてよかったよ」


 リッキーは大樹を振り仰ぎ、天を見た。


「小鳥はルイに感謝してる。優しい、君の心に」


 巣に戻ってきたヒナを確認してか、ルリビタキがしきりに鳴いて、ルイたちの方を見るように大岩にとまった。


「ほらね」


 リッキーは朗らかに笑った。


 その笑顔に、なんだか照れてしまって、ルイは冗談めかして言った。


「よかったなー。リッキーがオレと親友で!」


 そのとおりだ、と言うように、小鳥がひときわ澄んだ声で一声、鳴いた。

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