まだプロローグ
草原の露も舞い散る、風の中。
大樹に登ろうという少女の背に、心配そうな声がかかる。
「リッキー、おーい、リッキー! 大丈夫か?」
「うーん。全然平気ー!」
幼馴染の少年を尻目に、足場を見つけてひょいひょいと登っていくアレキサンドラ。
通称、リッキー。
彼女は胸の小袋から小鳥のヒナを手袋越しに包み込み、そっとそれを巣に返した。
「よし! もう大丈夫!」
でも、予想以上に高いところまで登ってきたので、どうやって降りるか、手段に困る。
だが、それは一瞬のこと。
十二、三歳の少女とはいえ、身が軽く、すばしっこい。
すぐに、そばの蔓をとり、するすると降り、最後は野生児のように、友人の上に舞い降りた。
少年は、ごん、という音を立てて、頭を打った。
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