ショートショートショート。

ソウナ

Emotion

一人の少年がいた。

彼には両親がいなかった。

いつも一人で家に引きこもって、黙々と機械をいじっていた。

彼は、絶対に壊れない人間が作りたかった。

そのためにはまず、絶対に壊れないボディが必要だった。

そして今日、それは完成した。

核爆弾が真上に落ちたって壊れない、頑丈なボディをもったロボット。

彼はそれに、昔、遊びで作ったごく簡単なプログラムを入れてみた。

少しの間隔をあけて、ただ「エモーション」とだけつぶやく。

そんな単純なプログラムだった。


>>

// PROGRAM NO.005

main pro(

roop point

talk{ EMOTION... }

sleep{ 15(s) }

→to roop point

)end

<<


エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...


少年はニヤリと笑って、愛おしそうにそのロボットを眺めた。

さあて、次は感情を作らなくちゃ。

ここからが大変だ。頑張らないとな。


けれど、その日の夜、

寝ぼけたどこかの偉い人が、間違って押したミサイルのせいで戦争が始まって、

世界は焼け野原になった。

みんな、死んでしまった。

少年も、炎に包まれて死んでしまった。


何もない真っ赤な大地がどこまでも続くなか、

ロボットだけがずっと、一つの言葉を発し続けていた。


エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...



 ◇◇◇◇



エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エェモヴォォジョオォォォン...

エモオォショオォォーン...

エェモヴォォジョオォォォン...


たくさんたくさんの時間が経って、

ロボットの発声装置が、金属が擦れる時のようないびつな音を出すようになった頃、

地球に気味の悪い三角の機械が飛んできた。

その中には、たくさんたくさんの背の高い機械達が乗っていた。

生みの親が入れたプログラム通りに、彼らは「カンジョウ」を探して、宇宙を漂流していた。


「コノ星ニハ、生キ物ハイルカ?」

「イヤ、コノ真ッ赤ナ大地ヲ見ルカギリ、ソノ可能性ハ低ソウダ。」

「引キ上ゲルカ?」

「イヤ、座標A-2236-5571デ、何カ音ヲ出シテイル物体ガ在ルゾ。」

「ナラバ、ソノ座標ヘ行ッテミヨウ。」


三角の機械はくるくる回りながら宇宙空間を飛び、

少年の作ったロボットのところへ向かった。


エェモヴォォジョオォォォン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エェモヴォォジョオォォォン...


彼らは飛行物体から降り立つと、少年の作ったロボットを取り囲んだ。


「コノ物体ガ音ヲ出シテイルヨウダ。」

「コノ物体ハナンダロウ。生キ物ナノダロウカ。」

「見タトコロ、我々ト同ジヨウニ機械デアルト推測サレルガ。」

「見タ目ダケデハ早計ダロウ。博士ノ作ッタ『カンジョウ判別装置』ヲ持ッテ来イ。」

「ソレナラココニ在ルゾ。」

「ヨシ、コレヲ起動シテ調ベテ見ヨウ。」


ピ、ピ、ピ...ピコーン...ピ、ピ...ピコーン...


「見ロ、装置ガ反応シテイルゾ。コノ物体ハ感情ヲ持ッテイル。」

「本当カ。」

「本当カ。」

「本当カ。」

「本当カ。」

「早速中身ヲすきゃんシテ見ヨウ。」


エェモヴォ...ォォォ......


少年の作ったロボットはすぐに三角形の飛行物体の中に運ばれた。

すぐに分解作業が始まり、中身を正確に的確に細身の機械たちは分析していった。

そして、少年の作ったプログラムを見つけた。


「オオオオ、コレガ感情ノ源カ。コンナ、小サナぷろぐらむダトハ。」

「我々ノぷろぐらむトクラベテ、三億分ノ一行ジャナイカ。ソンナバカナ。」

「探シテイタ『カンジョウ』ハ、タッタ六行ノぷろぐらむダッタノダ!」


こうして、その機械たちはカンジョウを見つけ、旅は終わった。


彼らは、荒れ果てた真っ赤な地球に降り立った。

全員に、たった六行のプログラムを追加して。


エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エェモヴォォジョオォォォン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エェモヴォォジョオォォォン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

エモオォショオォォーン...

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