時はゴールドラッシュ。自分もきんで一山当てようと、ジャックはこの街にやってきた。着いたばかりのジャックがバーで休んでいると、ヒゲを蓄えた男が声をかけてきた。

「穴を買わないか」

「穴?」

「そう、穴だ。きんはとても深いところにある。いちから掘ると大変だから、俺が途中まで掘った穴を譲ってやろう。お前は遅れてやってきたから、穴を買わないと他の奴らに出し抜かれるぞ。値段は100ドルだが、なあに、きんが出ればすぐに取り返せるさ」

 ジャックはなるほどそうかと思い、100ドル紙幣を取り出した。


 ヒゲの男の案内でジャックが連れて来られた場所には、確かに岩壁に大きな穴が空いている。

「この穴だ。幸運を」

 ヒゲの男はそう言って、ジャックの肩を叩いてから立ち去った。

 ジャックがつるはしを振り上げて、ガツガツと穴の奥を掘ること6時間。金が出てくる気配はまったくない。しかし、ここでやめてしまったら大損だ。カラカラに干からびた荒野で、ジャックはひとり穴を掘る。

 あと20センチで出るかもしれない。それだけ掘って金鉱石が出なかったら、諦めよう。しかし、金が出てくる気配はない。

 あと10センチで出るかもしれない。それでも出ないなら、諦めよう。しかし、金が出てくる気配は一向にない。


 ジャックは街に戻り、バーにいる男に声を掛けた

「穴を買わないか。150ドルだ」

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