第48話 答えの先にあるもの
頼邑は、アオと共に里へ帰ってきた。ここで過ごした場所は、凄惨な爪痕が残ったものに変わり果てていた。
そこに、駆け寄ってくる複数の足音が聞こえてくる。頼邑は、走ってくる伊助に眼をやった。
伊助の後方から足をもつれされ、泳ぐような足取りで走ってくる平八郎や男たちの姿が見えた。
伊助が走り寄り、後に平八郎が続いた。頼邑のそばまで来ると、頼邑さまっ……と、ふたりは言ったきり、
次の言葉がでない。
里を追い出した日から、申し訳ない思いで胸が苦しかったのである。
いっときすると、
「頼邑さま、よく帰って来てくれた……」
そう涙声で、ふたりは頼邑の手を確かめるように強く握りしめた。
「頼邑さま、少し休みやしょう」
伊助が、茶を手にして言った。
それから、お花が丼を抱えて顔を出した。丼には、ひじきと油揚げの煮物が入っていた。お花が、作った物らしい。
「ありがとう」
さっそく、三人は煮物に箸を伸ばした。
お花が持って来てくれる煮物は最初の頃と同じく美味である。
「だいぶ、里も落ち着いてきたな」
あれから、壊れた家屋を再建築するのに右官(大工)の伊助は休む暇もないくらい忙しく、頼邑もその力になっていた。
「そろそろか……」
頼邑がしんみりとした口調で言った。
「何がですか?」
伊助が訊いた。
だが、頼邑は答えず、遠方にある不死の森を見つめていた。
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