第22話 名

人間を憎みながらで闇の中のでも、安らかで温かく……。

でも太陽より静かで青い月。

日の光より優しく、闇にあっても温かさを失わないひかり。

少女の背後に金色の美しい光を放った月が少女をつつんでいる。

……ひかりを失わないでほしい。世を照らす光。

「名がなくては呼べない。玉藻がそなたの名を授けてよいと言ったのだが、よいか?」

頼邑は、穏やかな声で聞いてみた。

少女は、好きにしろ、と言ったっきり何も口にしなかった。

ー光ー

「そなたの名は光。どうだろう」

少女は、頼邑の顔を見つめていたが、やがて静かにうなずいた。

光の心に光という自分の名がひびいた。初めての自分の名前を命を助けた人間がくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る