第4話 心の迷い
縁側に虫の音が聞こえる。夜気が青く澄んで、十六夜の月がかがやいている。
宿無しの頼邑に和尚は、快く泊まることをすすめてくれた。ちょうど、弟子たちの使っている部屋の斜向かいの部屋が空いていたので、そこへ頼邑に好きに使っていいと言ってくれたのだ。
頼邑は、夕餉のときに、和尚が話したことが頭からはなれないでいた。瞼を閉じれば、故郷が脳裏に浮かぶ。もうわずかな食糧さえ残っておらず、餓えに苦しむばかりではなく、挙げ句、里の宝とされてきた子供まで手にかけようとした。
里の皆の痛みがよみがえった同時に、和尚の言葉がまるで交差するかのようによぎった。
頼邑の背後に真夜中の寝室にゆるやかに揺れる庭木の影が落ちている。まるで、気持ちがそこに写り出されているかのようだ。
月は、頼邑の心情を試しているかのように雲に隠れてはまた、光を照らし、隠れていった。
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