第19話 某の不得手とする技能じゃな……
「刀。お前のスリーサイズを教えろ」
刀はグラウンドに突き刺さり、かたかた震えた。
「……すりーさいずというのは、女体三位寸法に相違ないな?」
「たぶんそれでいい。ああでも尺とか寸とか使うなよ。センチで教えろ」
フランが俺に向かってきた。
「コーチ。セクハラです」
「必要なことだ」
「ふざけないでください」
ぞくっとした。いつも俺を
なんで俺がこんな小娘に……。が、特に反論も見当たらないので撤退した。
うざ。
明くる日、俺は練習場に大きなカバンを背負って行った。意気軒昂な生徒達がわらわらと集まってきて自主的に整列。きらきらの目が早く始めろと言っている。
「刀。ポストプレーとはどういう意味だ」
「
「お前がポストになるんだよ!」
刀はキョトンとしている。
「よおし。ゴール前に立て」
ボールを蹴りながら俺は刀に近づき、カバンから着ぐるみを取り出した。
「それはなんじゃ?」
「着ろ」
刀は真っ赤な着ぐるみを身につけた。練習場は笑い声に満ちた。刀だけは真顔だった。かわいい! と声が上がる。大は小を兼ねたがしかし
だってしょうがないじゃないか。
「
「昨日、手芸店に行って
存外に器用なところがあるものじゃ、と刀は感心したがそんな
「かわいくない」
マン・ゴーシュが小さくつぶやく。
「ポストのコスプレができたな」
エロスは腕組みして微笑んだ。その白ブリーフがまぶしい。
まさかとは思うがこれがポストプレーではあるまいな。モーニングスター
は眉をひそめる。
エロスはボールを蹴った。軸のブレたインサイドキック。ボールは横回転して、刀が止める。
「刀。ポストの仕事とは何だ」
「郵便箱……。
「受け取った後は?」
「郵便局吏員が回収……」
「で?」
「配達じゃ」
刀の顔色が変わる。
「そこまでの行程はポストプレイヤーの役割だ。ボールを受け、配球する」
手が挙がった。ククリだ。
「配球するという意味では
「ポストプレイヤーは前線でボールを受ける。
手が挙がる。フランだ。
「たったこれだけの説明のために着ぐるみまで作ってくることはなかったんじゃないですか」
フランは行動は御立派だがお口は反抗的だ。むかむかする!
モーニングスターの意見は別だった。確かにバカバカしいが、印象的だ。こんなにバカバカしいことをすると、指導内容を記憶してしまう。ユーモアとしても悪くない。まあ、労力に見合ってはいないのかもしれないけれど。そしてそんな意見をそっと胸にしまい込む。
※ ポストプレーのpostは
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