第18話 カウンターの布石に
「浜松が仕掛けてきたパワープレーに対して、うちはあまりに
俺は嘘をつく。
「実は、昨日はお前らの対応力を試したんだ。でも、どうやらお前らにそんな力はなかった」
よくもぬけぬけと。なけなしの威厳を保つために。
「昨日、パイプオルガンが入ってからやられ放題になってしまった。どうすれば良かったんだろう?」
俺はよくコーチからこんな質問をされた。それを真似してみる。
なかなか反応がなかった。何分かして、遠慮がちにモーニングスターが手を挙げる。
「引きっぱなしになったのが問題だと思う。受け身になってこぼれ玉も拾えなくて、ますますパイプオルガンにビビってさ……悪循環」
次にカットラス。
「力はうちの方があったんだ。勇気を持って攻めた方がよかった。もう一点取れば勝ちだった」
そしてランス。
「カットラス君に同意。確かに守り切るのにリトリートは有効な選択肢だと思う。が、
前向きな話で意見がまとまった。俺が口を出す。
「リードしたチームがリトリートしたとき、負けているチームが猛攻に出て、結果逆にカウンターで失点するケースは多い。サッカーは攻めるとむしろ失点の可能性が高まるスポーツだ。
だがパワープレーはそんなサッカーの性質を緩和してくれるやり方だ。空の王者と良質なクロサーが条件だが。いくらパスコースを消しても空のボールには効果が薄い」
俺はホワイトボードに向かった。
「さっきの話に戻るが、こっちから攻めてわざわざ向こうにチャンスを与えることもあるまい」
4。2。3。1。赤いおはじきを並べる。今回は黒いおはじきも並べる。黒いおはじきはリトリートして、自軍ゴール前にへばりついている。
「赤がうちだ。赤一人一人の間隔を広く取る。こうしておいて、ボールを保持したら味方の間でぐるぐるパス交換をする。間隔が広い方がボールを取られにくい。無理して上がる必要はない。勝ってるのはうちだ。向こうは、ボールを取りに来る。ボールを取るためには……」
俺は黒を全面的に押し上げていった。
「プレッシングするしかない。すると、どうだ」
「ディフェンスの裏にスペースができた!」
手裏剣が思わず口を開いた。
「うん。敵はボールが欲しくて仕方がない。押し寄せる。相手を引きつけて引きつけておいて速攻。これが勝っているときの基本戦術になる。さあて。実践練習といこうか。外に出よう」
「あっ、待ってくださいよ」
俺は部屋を出ようとするフランベルジュを捕まえる。
「フラン。お前はさっき、答えを知っていたはずだ。どうして手を挙げなかった」
「わたくしは土曜日にコーチのお話を聞いていましたから。ずるいじゃないですか」
なんて奴だ。
「ところでコーチ……」
「ん?」
フランベルジュはうつむく。
「その、フランって言うのやめてもらえませんか?」
「長いんだよなあ」
キーボード叩くの面倒なんだよ。お前出番多いし。
「その……東方みたいで嫌なんです。わたくしはあんなに可愛くないですし」
「とうほう?」
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