第17話 いる

 そいつを初めて見たのは1ヶ月ほど前になる。

 お風呂から上がった私は、自室に向かおうと階段を上がっていた。

 すると、そいつは行く手をさえぎるように立っていた。

 その時はすぐに消えたため、目の錯覚に思えた。

 しかし、その日を境に頻繁ひんぱんに現れるようになった。出没するのは決まって家の中だ。どうやら私以外の人には視えないらしい。

 ある日、そいつが私の部屋に現れた。

 そいつは濁った瞳で見つめてくる。伝えたいことでもあるのだろうか。だとしたら私のもとに現れるのはお門違いだ。お寺の住職でも霊能者でもないのだから。

 最近そいつは、お風呂場に現れることが多くなった。

 頭を洗っていると、気配で顔の前にいるのがわかる。

 今日もそいつはお風呂場に現れた。

 頭を洗っていると、今日は背後から気配を感じた。

 いい加減にしてほしい。

 のぞかれているのは気分のいい物ではない。

 振り向いた私が視界に捕らえたのは、知らない男だった。

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