第14話 おかえり

 これは数年前、作者である僕が実際に体験した話。

 その日、僕は夜中に目を覚ました。

 枕元の時計を確認すると、時刻は深夜2時を過ぎていた。

 再び寝る体勢に入るが中々寝付けず、次第にのどの渇きを覚えた。


「ジュースでも飲むか」


 ふとんから出ると、階段を下りて1階のリビングに向かう。寝起きで足がふらつくため、慎重に下りた。

 リビングに入ろうとして、隣の部屋のドアが視界に入った。今は使われていない空き部屋だ。

 その部屋のドアが少しだけ開いていた。


「あれ?寝る前は閉まっていたはずなのに」


 不思議に思いながらも、ドアを閉めようとした。

 すると、風もないのにドアは独りでに開き始めた。

 初めて目にする現象に凍りつく。

 だけど、怖いと感じたのは一瞬だった。

 家族の話を思い出したからだ。

 数週間前、ひいおばあちゃんが体調不良を訴えた。すぐに家族が病院に連れて行くと、その場で入院が決まった。

 毎日ひいおばあちゃんのお見舞いに行った家族によると、ひ孫である僕や弟のことを心底心配していたらしい。

 そして「早く帰りたい、帰りたい」と何度も言っていたという。だけど願いは叶わなかった。

 数日後、ひいおばあちゃんは静かに息を引き取った。

 空き部屋は生前ひいおばあちゃんが使っていた部屋だ。

 今ここにいるのは、ひいおばあちゃんなのだとわかった。

 姿は見えないが、いるのだと。

 だから僕は、この言葉を送った。

 

 おかえり。

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