この作品の舞台は、妖怪や鬼といった超自然的存在(オトギと総称される)と人間が、紆余曲折を経て共存することとなった近未来。主人公・タローは、浮世絵町の「超常現象対策課」の一員として、持ち込まれるさまざまな依頼を解決する日々だ。あらすじからは、「少し不思議」な公務員のお仕事系小説という印象を抱くかもしれない。正直、私もその一人だったわけだが、読み進めるうち、この期待は、いい意味で裏切られた。
ある日タローが引き受けることとなった依頼は、キョンシー少女の護衛。彼女を追って浮世絵町へと飛来するネクロマンサー、道士・王志文と、タローの上司である炎の魔女・ユカリとの、度肝を抜かれる異能バトルに突入するや、物語はノンストップで疾走して行く。この二人がとにかく強いのだが、特に道士が繰り出す五行の技が実にかっこいい。
そして、物語前半は傍観者役であるかに見えたタローの隠された能力、そして「タロー」という「名前」の秘密が明らかになっていく過程には、ネタバレになるので詳しくは伏せるけれども、「そう来たか!」と唸らされる。
読者によっては、擬音語の使い方に賛否両論あるかもしれないが、小説の魅力を大幅に削ぐほどの疵ではあるまい。妖怪好きの読者だけでなく、バトル好きのライトノベル読者にもぜひ一読をお勧めする。