055 国境を超えて

 欧米ではセレブリティとはお金持ちを指す言葉ではなくて、注目を浴びている人を指すのだとか。ハリウッドスターが話題になることが多いので、ニュアンスまでは輸入されなかったみたいです。大富豪なのは変わりませんけどね。

 スターといえば、日本でも通じる言葉です。しかし一見すれば同じでも、やはり欧米と日本ではニュアンスがだいぶ異なる。欧米圏でのスターは、文字通り手の届かない場所で輝く星です。一般人とは違う世界に暮らしている人種。そりゃそうです。海外は銃の携帯も、ドラッグだって手に入れようとすれば可能で、日本みたいに安全じゃない。命の危険にさらされる可能性が、現実としてあるんですもの。

 不逞の輩には失うものがない。失うものは命か自由くらいのものでしょう。

 日本でのスターは、せいぜい人気者といったところです。それは文化や気質の現れであって、どちらが言葉として正しいか、みたいな話ではありません。

 よく海外へ行った人が、外国へ出ると日本人だと意識させられる、世界の広さを感じた、なんて語ります。これはつまるところ、文化の違い、カルチャーショックを経験しました、ということだと理解しています。世界が広いとか、わたしたちは日本人だとか、そういった感覚は国内にとどまっていては実感しにくいでしょう。それは周りがみんな日本人だからです。

 アジア圏は、国名+人が成り立つところが比較的残っている地域でしょう。アメリカやヨーロッパは移民の受け入れが多く、その国に住んでいるから○○人と言われますが、中身は多種多様です。彼らが過去に植民地政策を行った名残であり、違う国を侵略して自国の支配下に置いたのが大きな要因となっています。日本は植民地ブームには乗り遅れましたから、結果的に欧米とは異なり、純日本人みたいなものが保たれている気がします(上手い表現が浮かばなかったので、こんな言い回しになってしまいました)。

 いろんな文化が混ざると、衝突が起きます。ヨーロッパでは移民問題が深刻化していますけれど、聖地を巡って宗教対立をずっと行ってきたわけです。その点で、日本は世界でも有数の宗教先進国です。どの宗教も対立せず、なかよく手を取り合って、ときに棲みわけている。

 それは日本という土地だからこそ可能なマジックかもしれません。欧米とは異なる歴史をたどり、独自の文化と気質があるから成り立っている、危ういものとも考えられます。

 わたしは、いろんな国があっていいと思っています。けれど、そこには配慮が欠かせません。国や文化が多様になるほど、配慮も増えてほしいものです。

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