054 演奏家はネイルを気にする
高校生のころ、ピアノを習っていました。小さいころから家にアップライトピアノはあったものの、弾けないのでインテリアと化していました。それで、せっかく家にあるんだから、ちょっとくらいは弾けるようになりたいと思ったのです。音楽が好きで、ウクレレやギターに触れたことはあっても、先生について習った経験はそれが初でした。
先生といっても、親の知人に紹介してもらった音大生で、まだ学生の身です。わたしとしては、音大に入学できたなら楽しいのかな、くらいには思っていましたが、なにせ指運びすら知らないど素人。それこそ小学校に入る前からピアノが友達でした、みたいな育ちの方がクラシック界にはごろごろしてます。なので、音大生でも十分に立派な先生でした。
第一線で、世界を股にかけて活躍している演奏家は、子供のころから音楽一筋です。裏を返せば、それ以外は切り捨てている。なので個性的な方がたくさんいるものの、わたしの先生は結構普通の人でした。ファッションセンスは、同世代の大学生と比べると、大人びてはいましたね。
ピアノにせよ、ギターにせよ、演奏するときに爪が伸びていると楽器にあたります。なので爪を短く切っている人が多い。どんなに派手な格好のロックスターであっても、ギタリストやベーシストなら爪はきちんと切られています。面白いでしょう? 無頼に見えて、爪に気を遣っているなんて。
わたしも遊び半分でマニキュアを塗ったことはあります。黒いのだったり、ラメ入りだったり。もしネイルサロンで爪に装飾を施している音楽家がいたら、それはボーカル担当かもしれません。
野菜類をあまり食べない日が続いて、ビタミンの摂取量が少なくなると、わたしは爪の付け根が荒れてきます。残念ながら、今もそうです。ささくれが出現し、あまりに酷いときはひび割れる。爪が薄くなってきます。ギターを弾いて、削れちゃうのが要因でしょうか。ピアノはもう、家からなくなってしまいました。
足には巻き爪を抱えています。子供だったとき一度、手術をしました。足の甲に打たれる麻酔注射が痛いのなんのって。じたばた暴れちゃいました。巻き爪以上につらかったです。片足の親指を処置しただけの、短い手術だったので、日帰りでしたけどね。縫った傷を抜糸する感覚って、独特のものがあります。
ネイルケアの面倒さは、体調をベストに保つ大変さにつながっていると思います。わたしも今ではすっかり、自分の爪が伸びてくると、違和感で整えたくなるという性質に染まってしまいました。
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