050 風の神の託宣を、どう表現する?

 かつて卑弥呼は託宣を行い、民衆を統治したのだとか。神のお告げを聞いて、それに基づきまつりごとを執り行っていた。トランス状態に陥って、霊的な存在の言葉を引き出したり、寺社の縁起には夢枕に立った神仏の命に従って興したなんて話もあります。ある種の人は、そういった才能を持っていたのでしょう。

 神のお告げを聞くにあたって、占いを用いて形から吉凶を判断する、なんて方法があります。骨を熱して、ひび割れた形から判断する。水鏡の波紋から判断する。石やサイコロ、靴を投げてその形で占う。星の並びから、出たカードから占う。人類は、さまざまな方法を用いて、未来を見通そうとしてきました。

 さて、あなたがシャーマンだったとしましょう。風の神様の託宣を聞こうとする。そのとき、どうやって風を占いに使いますか?

 ちょっと考えてみたんですけれども、水鏡では水の神のお告げと区別がつかない。砂を撒いて、風がさらうのを待つ? こいのぼりみたいなものを棒にくくりつけて掲げる? さあ、どうやって風を可視化しましょう。

 占い自体はさておき、どうやって見えないものを形として、しかもランダムな結果が現れるようなツールへ落とし込むか。後から占いをした人は、この問題に直面したと思うんですよね。棒を倒して、その方角へ進む、くらいのものであれば簡単です。ただし神様という神輿を担ぎあげるとなると、それなりのパフォーマンスが求められる。しかも見ていて、わかるひとにだけわかる、暗号のようなものが望ましい。

 できれば結果がそぐうものであればベターですけれど、そこはどうとでも言い逃れできてしまいます。「あなたは悩みを抱えている、そのサインをあなたは見落としているのです」みたいな文言は、万人に当てはまる。こういうテクニックを、コールドリーディングなんて呼んだりします。

 コールドがあればホットリーディングもありまして、こちらは仕込みをしておいて、それを悟らせないスタイルです。テレビ番組のやらせと同じで、パフォーマンスを観衆に見せつけるには有効です。どちらのリーディングも、使いどころが肝心。コールドは会話術に、ホットはエンタメ向きですね。手品だって、タネがあるとわかって怒る人はいません。

 そのかわり、タネがあるという前提で見ると――占いならあらかじめ疑ってかかると―-人はあらさがしをしようと躍起になる。これをやられちゃエンタメにならないので、気をそらせるテクニックが発展しました。

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