048 ファイティング・スピリッツについて

 どこかから超自然的なものがあなたを見つめている、という趣旨のことを言われたので、アクセス数はどうなのよ、と返したら「現代っ子め!」とぐぬぬされてしまいました。PV数がすなわちマネーの、非常なビジネスを生き抜いているみなさま、こんにちは。

 わたしは幼いころ乗り物が好きだったらしく、電車や車に乗ると大喜びだったと親から聞きました。成人してからも、ふと夜に放送していたトップギアという英国の車番組を見てから、自動車って楽しいものなんだなと再確認しています。

 F1もその後、しばらく見ていました。2016年からは無料でのテレビ放送がなくなりましたね。よっぽどのファンでないと、リアルタイムではもう見ていないでしょう。モーターレースの最高峰なんて言われるF1ですけれど、ここ数年はマシンが速ければイコール優勝できる、という構図。ドライバーの技術でカバーできる範囲を、マシン性能が超えてしまっている部分があって、2年も見ればだいたい飽きてくる。結果が想像できちゃうんです。

 わたしが見ていたときは、セバスチャン・ベッテルというドライバーが優勝を何度も獲得していた時期でした。中でも印象に残っているレースがあります。年間チャンピオンを前年に獲得していて、誰も彼に追いつけない。そんな雰囲気が残っていた時期です。

 うろ覚えで恐縮ですが、あるときセバスチャン・ベッテルが上位5位以内を走っていたのに、トラブルで最後方に追いやられてしまいました。車同士が接触したんだか、マシントラブルがあったんだか、不可抗力でした。トップドライバーが一転、ビリ集団の仲間入りです。彼はそこから追い上げて、6位くらいまで持ち直してレースを終えた。優勝した走りよりずっと、いいレースをしたと思います。

 同じくF1ドライバーで、フェルナンド・アロンソというスペイン人がいます。年収もトップクラスで、しかしここ数年はあまりチャンスに恵まれていません。彼がインタビューで、レースでハンドルを握っているとき何を考えて走っていますか、と尋ねられました。他のドライバーとのかけひきだったり、チームメイトの位置だったり(なにせ同じ性能のマシンに乗って競っているのです)、レース中にはいろいろ考えなければならないことも多いのでは、と。すると彼は、ただ走ることだけに集中している、と答えたんですね。恰好いいでしょう?

 プロの姿勢って、そういうものなんだろうな、と感じました。強さというのは、純粋な気持ちから自ずと生じてくるものなのでしょう。

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