044 わたしボイン
小学校に入学すると、行列を作らされます。幼稚園からだったかもしれません。やっぱり、教える側からしても、把握しやすかったということなんでしょう。一覧で図にすると、ぱっと全体が見渡せますから。こういうのって、誰がやりはじめたんでしょう。効率いいです。
わたしは列の最後尾が定位置で、でも全体からすれば最初にいる。中途半端な位置と言えるかもしれないですね。
そうそう、みんながわたしの名前を呼ぶとき、ぽかんと口を開けた格好になるのが見ていて面白いです。具体的には明かしませんが、似たような字で別の音になる、いわゆる同音異語に近いものが使われています。
よく行列でとなりになる子は、だるそうにしてました。喧嘩に弱いってわけじゃないんでしょう。でもノックアウトっていうんですか、たまにへろへろになってました。喧嘩って言っても、口喧嘩なのであしからず。
わたしは芸術の才能にはあまり恵まれなかったです。絵は、並べられるといつも下の方。もちろん、わたしがですよ。上にはいけないのに、順番で並べられると、それとなく気づかされる。つらいかっていうと、特別つらい思いはしていないです。そのぶんだけ、わたしにだって長所があるんです。
友達と一緒にいるとき、わたしはよく、おどろかれたり、感心されたりしています。友達も呼び名をちょくちょく間違われるって、ぼやいてました。そういう部分は、気が合います。案外、仲良くなるのって、そんなきっかけだったりするんでしょうか。寂しがりやなのかどうか、くっついていくのはよくあります。
でもよく、自分には中身が何もないな、と感じてしまいます。例えばドーナツ。外側はあるけれど、本質を考え出すと、どこが外でどこが内なのかなんて、答えの出ない話で。それと同じです。中身があるって、どういうことなんでしょうね。考えれば考えるほど、よくわからなくなります。おまえはからっぽだ、なんて言われると、どうしていいのか悩んじゃう。
人から言われるといえば、こっちは自慢。自分ではまったく意識しなかったんですけど、どうやらわたし、いわゆるボインの部類に入るのだそうです。念のため書くとこれ、わたしが自称してるんじゃないですからね。もー、勘弁して。周りから、そういう風に言われるってだけです。πの話はしてないよ。ヘンな目で見ないで。
さて、ここで問題。『わたし』とは、いったい何でしょう。ひらがなで一文字、ローマ字で一文字。はりきって、お答えください。
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