033 展覧会の絵は音楽なのよ
以前、何人かのアーティストが合同で展覧会を開いている場にお邪魔したことがあります。ネットで見かけたことのあるモデルさんなんかも来ていて、横目でちらちら気にしつつ、わたしは縮こまりながら見学しました。
展覧会といっても、ああいった場は即売会も兼ねています。と鼻高々に語っている本人が、数年前に初めて知ったってんだから、頼りない話よねぇ。
美術館では、飾られている作品の右下か左下にプレートが貼られていて、作品タイトルが記されています。作った年代、使われた素材、もしかしたら簡単な解説なんかもあるかもしれない。でも、リアルタイムの展覧会の場合は、だいたいタイトルとお値段が書かれています。買えるんですよ、作品が。
アーティストがどうやって生活しているか、というのを考えれば明白で、もちろん創作物を販売して収入を得ているわけです。あとはバイトか恋人(ないし配偶者)や家族に養ってもらっている。一発当てれば世界に羽ばたけますけれど、その一発が生きているうちにくるかどうかは、ギャンブルですから、これはもうしょうがない。そういうものです。
すでに買い手がついていたり、非売品だとプレートに赤丸の小さなシールが貼られています。基本的に一点モノですから、なくなればそれでおしまい。だから価値があるんです。
田舎だと人口の問題もあって、いかんせんお客さんの入りが渋いので、展覧会は都市部で多く開催されます。どうしても実物を見たい、あるいはめったに見る機会がない、なんて場合は電車を乗り継いだりして、えっちらおっちら足を運ぶ。で、そういうとき、わたくしどうも財布が軽いものですから、できるだけ歩いて移動するように心がけております。
でもほら、普段から運動不足が積もり積もって形を成している生物じゃないですか。特に展覧会なんて立ちっぱなしだし。飲み屋だってそんな行かないっつーの、って気力ではしごしちゃうし。
あるとき、展示室の椅子に腰かけたら、足が張っちゃって、立ち上がれない事態に陥ったんですわい。わしゃー、もう歳なんじゃ……。体がね、実力行使で訴えかけてきますから。メンタルまで一直線に。受け止めるしかない。
そうして燃え尽きたまま、ぼんやりしていたら周囲の声が聞こえまして。あのひと、本当にあの作品好きなんだねぇって。目の前にはフルヌードの球体関節人形が二体。しなだれあって、こちらへうつろな瞳を向けているわけじゃないですか。
もう、言われるまま、なすがまま。だってもう歩く元気ないんだもん。
ちなみに展示されていた球体関節人形ですが、お値段は一体で、400万円ほどでした。欲しい。
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