029 猫だけが知っている

 昔は犬を飼っている世帯の方が多いか、猫と二分されていたそうですが、ここのところは猫を飼う世帯が増えて、数字が逆転しています。犬の場合は散歩に連れて行かなくちゃだし、吠えると近所迷惑だし、なかなか飼うのが難しいのかもしれません。

 猫は吠えないし、家の中で飼えるし、散歩に行かなくたっていい。ルックスもかわいい。わたしとしては、どちらも好きなんですが、見るなら猫で飼うなら犬でしょうかね。といっても、これまでの人生でどちらも飼ったことがありません。ペットの世話ができないと自分でわかっているので、命を預かるような真似はとてもとても。飼っている人はすごいなーと思います。

 ペットと言って思い出すのは、縁日の金魚すくいで獲得してきたものくらい。金魚鉢はさいわい、子供のころの家にありましたから、環境は問題なかった。でも、なぜ水道水をそのまま鉢の中へ入れちゃダメなのか、とか基礎知識に欠けていて、長続きしませんでした。泳ぐ金魚を見るのは好きなんですけどね。

 あるいはカブトムシやクワガタも家にいたことがあります。イメージの中では、かっこいい虫でした。でも彼らはアクティブに動き回る生物じゃないので、のろのろしていて、飼育箱の中じゃ眠ってばかり。つまんないの、と思って世話しているうちに、亡くなってしまいました。彼ら用に用意したエサが、大量に残ってしまってもったいなく思ったのを覚えています。

 もう、読むだにペットを飼うのに向いていないでしょう? 人のペットを触らせてもらうだけで十分ハッピーです。

 猫といえば、真夜中にふっと何かの音がして目が覚めまして。カーテンをめくり、窓の外を見ると猫の集会真っ最中。なんでこんな場所でやってるのよ。息をひそめて成り行きを見守っていたら、パパラッチされているのに気づかれたのか、集会は解散してしまいました。残念。

 ニャーニャー鳴いているわけでもなく、立ったまま、深夜に猫が顔を突き合わせてじっとしている様子は、そりゃー奇妙なものでした。どこからこの子たち来たんだろう、というくらい。見たことのない猫もいました。

 もしかしたら寝ぼけて夢でも見たのかな、なんて思いながら布団に戻って、朝を迎えます。窓を開けても、痕跡は残ってない。いつ猫の集会が開催されているのか、どんなスケジュールで集まっているのか、不思議なものです。

 猫又は人語をしゃべるなんて聞きますけれど、彼らも秘密の言葉で語り合っているんでしょうか。猫にしか通じないシグナルを発して。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る