027 言い回しのよさが、作品の強度になる
家には小説より、漫画の方がたくさん置いてあります。漫画と比べて小説は場所とらないし、コスパいいんですけれど、目にやさしくないので。
さて、漫画だと物語はどうでもいいけれど、絵が好きだから手元に置いておく、なんてケースがあります。ストーリー入りの画集みたいなもので、絵本に近い感覚です。小説は内容で勝負するしかないので、表紙でとっておこうというのは、あまりないんじゃないでしょうか。ありえない、とまでは言えないまでも。
じゃあいい小説の基準としているものは何か、というと映画の基準と重なってくる部分があるんですが、ずばり言い回し。物語云々はあまり大事にしていません。小説は、一度読んだらほぼ読み返さない派閥なのです、わたし。時間がたつにつれて、内容を忘れちゃうこともしょっちゅう。物語にはパターンがありますし、小説の良しあしはそれだけじゃないです。
レイモンド・チャンドラーの小説に『大いなる眠り』という作品があります。これがまあ、一人称で読みにくい。ミステリとしては、ちょっぴりアヤシイ個所もある。それでも名作と名高いのには理由があります。
序盤、主人公のフィリップ・マーロウが、命令違反に関しては多少の実績がある、といった感じのセリフをいうシーンが出てくる。しびれるでしょう? こんな言い回し、できます? 英語ならではの表現だと思います。日本語の文法だと、あまり出てこない気取った表現なので。
でもね。こういうのを読みたいんですよ。当たりはずれがあっても、なお小説を読んでしまう理由のひとつであり、同時に憧れでもあります。神が細部に宿るというなら、これが神です。宿ってる。寝泊まりしてる。むしろ同衾したい。
海外の物語、特に欧米だと主人公が大人、しかもオジサンやオバサンなんてのがざらにあります。日本はその点、ないわけじゃないですが、やっぱり目につきやすいのは高校生が主人公の作品ですね。
アタックNo.1のアニメで、高校受験に際してヒロインと、仲良しの男の子が手を取り合ってお互いを励ますシーンが出てきます。そのとき『若い力でがんばろう』と言うんですよ。若い力て。ヤングパワーて。あんたら中身、絶対おっさんだろ! というくらい、違和感のかたまりでびっくりしました。一周回って、自分の中で面白くなってます。要は、気に入っちゃった。そういう時代だったんでしょうか。
恋愛という言葉も、現在の意味で定着したのは1960年代あたりなんて話を見かけましたから、こういった感覚って、世代どころか10歳離れるだけで、別天地なんだろうなぁとため息出ちゃうわたしです。そりゃ歳とるわけだわ……。
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