006 ビジネスライクに愛して

 春が訪れようとしています。テレビで桜の開花について、天気予報でキャスターが触れていました。桜って、接近して見る分には綺麗だと思うんですが、中途半端な距離で眺めると、花びらの内側にある、がくというのでしょうか。おしべやら、めしべやらが生えている個所。あれがわーっと一斉に迫ってくるように見えて、気持ち悪いなあと感じてしまいます。

 人間の顔も同じで、テレビドラマなど、接写でドアップになっていると、うう~と引いてしまう自分がいます。気持ちの上では、そうですね、だいたい二割くらい。全体としてはかなり少ないです。

 それでも、アップが苦手って人はいるんじゃないかなぁと思います。需要があるから、あそこまで拡大接写するんでしょうけれど。

 毛穴だったり、シワだったり、じっくり見ないからこそ、いいんですよ。

 遠くから見て、ようやく綺麗だな、素敵だなと思える。そういうポイントがあるものです。そこをカメラマンは狙って映せばいいのであって、どんな対象であっても、比較的早くそのポイントを見つけられるのがプロなんじゃないかな、と思います。今、書きながらそれっぽいことが思い浮かんだのでそう書いてますが、書くまではそんなこと思いもしないんだから、話半分に読んでください。やんやん。

 アニメやイラストだったら、いくら近づいたって問題ない、と思えますけれど、人間に置き換えたら同じレベルの接写は、紙の毛羽立ちやインクが映る距離ですからね。

 距離が大事なのは人間関係にしても同じで、これをはかる達人が、愛されキャラと認知されます。どこまで踏み込んでいいのかなんて、わかりっこないんですけれども。だからといって、心理的にどこまで踏み込んでいいか試されると、人は不愉快に感じます。意図していなければ、事故として謝ればすんじゃうんですが、狙っているかそうじゃないかって、意外と敏感に嗅ぎとれたりしますから、剣呑剣呑。

 自分から遠い方が美しく見えたりするのは、アートの世界も同じです。感動的な作品を生んだクリエイターの苦労話は、成功しているから楽しいのであって、リアルタイムで赤貧だったら切ないですもんね。

 また好きだから近づきたい、という気持ちは自然です。でもどれくらい近づくのか、は厄介な問題だったりするもの。仕事とわたし、どっちが大事なの、なんてにじり寄られちゃったりして。

 主婦ないし主夫になって、あなたが仕事ですっ、こいつめー、キャッキャッ、とかしてみたい。ビジネスとして、してみたい。そう、いちゃいちゃするのが愛のビジネス。一生の仕事にできそうじゃないですか。

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